発酵をテーマに事業をはじめて10年になる。利用者やスタッフ、個々の魅力が「ぬか漬」のようにゆっくりと発酵し、社会へと広がっていくことを願って「ぬか」という名前に想いをのせている。こう話すといかにもな感じがするが(もちろんとても大切にしている考え方なのだが)、ただ「ぬか」という言葉の響きに惹かれたということもある。
柔らかな「ぬ」、歯切れのよい「か」。いいじゃないか。言葉の意味から逸脱して「ぬか」という音を遊んでいくと、どんどん自由になれる。利用者を「ぬかびと」、来客を「まぜびと」、毎年のお祭りを「ぬかよろこび」、オリンピックのパロディとして「ヌカリンピック」など、ほかにもたくさん……。ぬかはダジャレやユーモアが好きなのだ。
そろそろ本題に移ろう。ぬかは、就労継続支援B型事業所〈ひょん〉をはじめていく。簡単に言うと働く場所だ。名前の由来は「ひょんなことから」の「ひょん」。たまたまを大切に、あらゆる境界を飛び越えるようなイメージを重ねている。
仕事は「おむすびや味噌汁」の提供、「食品や本」の販売、「サウナ」などを予定しており、ゆくゆくはぬかびと一人ひとりに合わせた仕事づくりができないかと企んでいる。新聞ちぎりが好きな小池佑弥さんは、イベントでのワークショップが仕事になったこともある。好きなことや、その人らしさが働きにつながるためのチャレンジをしてみたい。ひょんな出来事は思いもよらぬところからやってくる。
「発酵」も「ひょん」も「待つ」ことが共通のテーマだと気がついた。美味しい漬物ができる「そのとき」を、言葉遊びでもしながら気長に待ってみよう。あなたも一緒にどうでしょう。