ストーリー
【メインイメージ写真】壁掛けカレンダーの下部を正面から写している。曜日・日付の表に、縦横無尽に鉛筆の線が走っている。

(カテゴリー)コラム

福祉の現場の文字採集
第2回 福井さんの歯医者の予定——伊奈真弓

読了まで約1分

(更新日)2024年06月28日

(この記事について)

コミュニケーションや意思表示、日常の断片として記される“文字”。福祉の現場では、障害のある人とスタッフとの関わりのなかで、時に言葉の感性が、独特な形状をともなった文字となって表れる。もしかすると、そこにはものの多様な見方を探るヒントがあるのかも? 「福祉の現場の文字採集」は、全国の福祉施設スタッフの方に、気になる“文字”を見つけていただく企画だ。第2回は、アートスペースからふるの伊奈真弓さん。

本文

【写真】メインイメージ写真の全面。2022年1月の紙面がひらかれている。上部に「牡蠣とかぶのチャウダー」の料理写真とレシピ、下部に曜日・日付の表が掲載されている。鉛筆の線が、上部ではランダムに迂回するように、下部ではカレンダーの右下を中心に走っている。

アートスペースからふるのアーティスト・福井将宏さんの専用カレンダーは、月に1度だけ、大活躍する。それは、歯医者の予約を描きこむ日だ。上の画像は2022年1月のカレンダー。右下に「歯医者」の文字が記されていることにお気づきだろうか(ちなみに、この月の歯医者の日は1月28日[金]だった)。「スタッフも忘れないでくれよな」と言わんばかりに、鉛筆を持つ手に力がこもる。どんどん伸びていく線は文字? それともアート? 来月も頑張るのだという強い意志を感じる。

【写真】2023年1月のカレンダー全面。上部には「豚肉と白菜のトマトミルクスープ」の料理写真とレシピ、下部にはカレンダーの表が掲載されている。鉛筆の線が「1月」の「1」の字のまわりなどを囲んで縦横に走り、表の木、金、土曜3列分のスペースを使って「歯医者」の文字が書かれている。
こちらは2023年1月のカレンダー。1月13日(金)が歯医者の日だった
【写真】2024年1月のカレンダー全面。上部は「焼き野菜ミルクソース」の料理写真とレシピ、下部にカレンダーの表が掲載されている。鉛筆の線が、紙面全体にぐるぐると無数に走っている。
2024年1月のカレンダーはさらにダイナミック。歯医者の日は1月19日(金)

年々変化していく文字はますます難解になっていく気配。今後どんなふうになっていくのか予想はつかないが、どんなに難解になろうと、スタッフみんなで楽しく読み解いていきたいなと思う。


関連人物

伊奈真弓(アートスペースからふる)

(英語表記)INA Mayumi

(伊奈真弓(アートスペースからふる)さんのプロフィール)
一般社団法人アートスペースからふる副理事長。サービス管理責任者として個別支援計画作成を担当。現場から生まれるアートを商品に展開する「商品部」の部長として、さまざまな商品企画・開発に携わる。
(伊奈真弓(アートスペースからふる)さんの関連サイト)