ストーリー
DIVERSITY IN THE ARTS PAPER Vol.14のメインビジュアルとなるイラスト。画像中央にDIVERSITY IN THE ARTS PAPERのタイトルロゴと、本号特集テーマである「ゲーム? わたしたちは隣にいる人とどうしたら一緒に遊べるだろう」とテキストが配置されている。その左側には、窓の向こうから飛び出してきた白いふっくらとした毛並みのイヌ、右側の上には雲から飛び出してきた縞々のヘビ、その下に大きな土管から顔を出す帽子をかぶった子どもの姿がある。全体的にまるみをおびたやわらかな印象のイラストになっている。

(カテゴリー)コラム

『DIVERSITY IN THE ARTS PAPER Vol.14』の歩き方

ゲーム? わたしたちは隣にいる人とどうしたら一緒に遊べるだろう

クレジット

読了まで約4分

(更新日)2024年01月24日

(この記事について)

2017年に創刊したフリーペーパー『DIVERSITY IN THE ARTS PAPER』の第14号が、2024年1月、4年ぶり2回目のフルリニューアルを迎え発行されました。本記事では、特集「ゲーム?」の全貌を掴むべく、編集部のステートメントからはじまり、4つの特集記事へのリンク、編集後記(イラストレーターのmakomoによる4コマ漫画も!)をひとまとめ。ゲームを軸に「障害」や「表現」とどのように向き合い、考えていくか。いろいろな感覚、とらえ方で読んでいただけたら幸いです。

本文

ステートメント

特集:ゲーム? わたしたちは隣にいる人とどうしたら一緒に遊べるだろう

今、目まぐるしく変化する、ゲームの世界。あらゆるゲームのオンライン化やデバイスの革新、eスポーツの隆盛、プロゲーマーやストリーマー(動画配信者)の登場など、場所や時間の制約を越えて、さまざまな特性や感覚をもつ人たちが自然と一緒に遊べる環境・状況が生まれている。そんな「ゲーム」を通して、障害や表現のあり方を、本特集でとらえ直してみたい。そのヒントをうろうろと模索するなか出合ったのが、文化人類学者・早川 公(はやかわ こう)氏によるテキストの一節だ。

「ふつう」の枠組みに気づいて「ふつう」をつくりかえるにはどうしたらいいのでしょうか。-中略-「ゲーム」を通じてぼくたちは「障害」や「ふつう」の境界線をぼかして、新しい社会をつくれる可能性があるとぼくは思います。いわば、現実の社会をつくりかえていくために、ゲームがその「あいだ」となるんじゃないか

ePARA「文化人類学者・早川公が語る!障害とゲームとSDGs〈連載1〉」より

他者との「あいだ」をつなぐゲームの世界に一歩足を踏み入れ、遊びながら、私たちの「ふつう」や「あたりまえ」をゆるがすための手がかりを探索すること。
まずは、そこからはじめてみよう。


もくじ

DIALOGUE|一緒に遊ぶ、からはじまること
NAOYA(ePARA所属アスリート) × なむ(ゲームさんぽ)

【写真】ゲームさんぽのなむさんと、ePARA所属・全盲のアスリートのNAOYAさんが笑顔で、一緒にゲームをしている。なむさんの顔はイラストで表現され、目隠しがついている。
左:なむ(ゲームさんぽ)、右:NAOYA(ePARA)

2023年10月、ePARA(イーパラ)とJR東日本スタートアップが主催となり、視覚情報に頼らないeスポーツ選手と一般参加者による格闘ゲームの交流会「心眼PARTY」が開催された。そこでストリートファイター6(以下、スト6)の対戦を行った全盲のプレイヤーNAOYAさんとゲームさんぽのなむさんが、当日のファイトを振り返りつつ、ゲームがつなぐ「あいだ」を語る本対談。ePARA代表の加藤大貴さんが立会人となり、アクセシビリティ、コミュニティとしてのあり方、他者の視点を知る実践など、いろんな方向へと広がりを見せた。

[文] 永江大(MUESUM)
[写真] 川瀬一絵
[編集] 多田智美(MUESUM)、永江大(MUESUM)、白井瞭


INSIGHT|ゲームがつなぐ「あいだ」って?

【イラスト】帽子を被った人と眼鏡をかけた人が散歩をしているなかで、黄色い鳥が飛んでいるのを見つけて指を指している。

ゲームの世界と現実世界、2つの世界をテクノロジーと人がつないでいく。「一緒に遊ぶ、からはじまること――対談NAOYA(ePARA)×なむ(ゲームさんぽ)」にも登場した、ePARA・加藤大貴さん、ゲームさんぽ・なむさんとの会話を通して、ゲームがつなぐ「あいだ」の可能性を考えてみる。

[文・編集] 白井暸、多田智美(MUESUM)、永江大(MUESUM)、鈴木瑠理子(MUESUM)
[イラスト] hakowasa


REPORT|「AUDIO AR GAME MAKER」でオーディオゲームをつくって遊ぼう! ワークショップ体験記

【写真】オーディオゲームづくりワークショップの様子。ワークショップ参加者がデバイスを宙に掲げて、アプリケーションを通して、空間に音源を設置している。

2023年7月、AUDIO GAME CENTERによる新作ツール「AUDIO AR GAME MAKER」が発表となり、あわせてツールを用いたオーディオゲームづくりのワークショップが京都で開催された。ミュージアムエデュケーターの朴 鈴子(ぱく りょんじゃ)さんがその模様をレポートする。

[文] 朴鈴子
[写真] 衣笠名津美
[編集] 永江大(MUESUM)


COLUMN|ゲームを通して意味の網の目を揺さぶる

【イラスト】「ゲームを通して意味の網の目を揺さぶる」という記事タイトルをイメージしている。中空に現れた円形の網の目を人が見つめている。また、網の目の奥には不定形のイメージがあり、円形の網の目からそこに焦点が結ばれているように描写されている。

特集テーマ「ゲーム? わたしたちは隣にいる人とどうしたら一緒に遊べるだろう」を俯瞰する、文化人類学者・早川 公さんによるコラム。「障害」や「ふつう」の境界をぼかす営みに触れる。

[文] 早川 公
[編集] 多田智美(MUESUM)、永江大(MUESUM)、鈴木瑠理子(MUESUM)、白井暸
[挿絵] hakowasa


編集後記

【イラスト】イラストレーターのmakomoによる4コマ漫画。1コマ目、画面左に膝を折りたたんで座る大きな黄色のヒト型生物、中央上部に白い全身タイツを着た緑色のヒト型生物、右にはベージュ色のヒト型生物が、ジャンケンで遊んでいる。それぞれ手の指を使って「パー」「グー」「チョキ」を出し、アイコとなる。2コマ目、今度は画面左にイカのような4本足の生物、右上に1コマ目とは顔の形の違うベージュ色のヒト型生物、右下には白いベールをかぶったような生物が、それぞれ声を使って「グー」「チョキ」「パー」を出し、アイコとなる。3コマ目には、1〜2コマで登場したキャラクターが思い思いに「グー」「チョキ」「パー」や「グー」「チョキ」「パー」以外のものも出してアイコとなる。紙に描いた石ころ・数字や、実物のはさみ・赤い木の実・石ころ、何も描かれていない真っ白な紙など。4コマ目、登場したキャラクターたち全員が正面を向いて集合し、「グー」と言いながらそれぞれの親指を突き出している。画面右端には「心がグー」とテキスト表示されている。

ゲームは人々の「あいだ」をつなぐメディアになりうる。これは、今号の特集制作を通し、私たちが得た手応えです。「ゲーム(game)」の語源は、「楽しみ」「遊び」、そして「ともに楽しむ」。定められたルールにとらわれ、他者と関わり合う可能性を狭めるのではなく、やわらかくルールを更新し、ともに新たな視野をひらいていく。ゲームは、そんな実践を育む土壌と言えるのかもしれません。


DIVERSITY IN THE ARTS PAPER vol.14は、PDFでもご覧いただけます。


DIVERSITY IN THE ARTS PAPER vol.14
発行元:日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS
編集:MUESUM(多田智美、永江大、鈴木瑠理子)+白井瞭
アートディレクション&デザインUMA/design farm(原田祐馬、岸木麻里子、大隅葉月)
校正:鴎来堂
印刷:シーズクリエイト