(山下完和さんのプロフィール)
山下完和
YAMASHITA Masato
社会福祉法人やまなみ会〈やまなみ工房〉施設長。高校卒業後、様々な職種を経た後、1989 年から〈やまなみ共同作業所〉に支援員として勤務。1990年に〈アトリエころぼっくる〉を立ち上げ、一人ひとりの思いやペースに沿って、自分らしく生きることを目的に様々な表現活動に取り組む。2008年からは〈やまなみ工房〉の施設長に就任。現在、施設利用者は約90名。
第五のとびら
それぞれの役割
彼らが描き、創り出す
僕は喋り、運転をする
〈やまなみ工房〉には魅力的な人が多い。
だけど、自分のことを紹介するのが苦手な人が多い。僕はアート作品を作れないけれど、車の運転ならできる。彼らは自分のことをあまり喋らないけど、僕はべらべら喋ることができる。みんな、それぞれに役割があるんですね。僕はべらべらと喋りますけど、アートも医学も専門的なことはわからない。
たとえば「自閉症とは何ですか?」と聞かれても正確なことは言えません。医者じゃありませんからね。
ですが、工房の人たちのことはよく知っている。彼らの中には足し算ができなかったり、名前が書けなかったりする人もいます。だけど、僕からするとすごい人たちばかり。社会の「障害者の概念」と、僕が見ている彼らの姿に開きがありすぎる。そこを少しでも縮められたらと思います。
だから、僕は彼らのことをたくさん話そう、伝えようと思うのです。
第六のとびら
風を入れる
こんな時代だからこそ
人と人が触れあえる場所をつくる
世の中を見回すと、新型コロナや防犯という名目で安全管理が徹底されています。たしかに、社会から隔離したり、遮断をしたりすれば、安全かもしれません。
〈やまなみ工房〉では遮断はできません。だって、これまで築き上げてきた人間同士の関係性まで断ち切ることになってしまうからです。僕は施設や社会、家庭にかかわらず、風通しが必要だと考えています。
「え? こんな時代に?」と言う人がいます。そうです。“こんな時代” だから、僕はたくさんの人に工房に来てもらい、素敵な人たちと出会って欲しいと思う。前よりもまして、人と人を身近に感じることのできる機会を作らなければと思います。