(山下完和さんのプロフィール)
山下完和
YAMASHITA Masato
社会福祉法人やまなみ会〈やまなみ工房〉施設長。高校卒業後、様々な職種を経た後、1989 年から〈やまなみ共同作業所〉に支援員として勤務。1990年に〈アトリエころぼっくる〉を立ち上げ、一人ひとりの思いやペースに沿って、自分らしく生きることを目的に様々な表現活動に取り組む。2008年からは〈やまなみ工房〉の施設長に就任。現在、施設利用者は約90名。
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第三のとびら
便利なもの?
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便利な物を使えないと
どんどん不便になる世界
僕が〈やまなみ工房〉に来て30年以上。その間に留守電、FAX、パソコン、メール、スマホが普及し、コミュニケーションの方法が変わりました。
たしかに便利です。だけど、工房には新しい技術を扱うことが難しい人たちもいます。日々、大多数に向けた技術やコミュニケーション方法が作られていますが、世の中が大多数にとって便利になればなるほど、それを使えない人たちは不利益を被ります。
一度、便利な世の中から取り残されてしまうとどんどん追いやられてしまう。僕は「便利な物」が使えない数パーセントの人のことを、もっともっと考えて世界のデザインをしなければと思う。
そうすれば、100% の人たちが幸せになれるのですから。
第四のとびら
ひとりぼっち

誰か僕たちの周りで
寂しくしていないかな
ある時、〈やまなみ工房〉の展覧会に30名ほどの団体が来ました。みなさん、「聞こえない、話せない人たち」でした。
「聞こえる、話せる僕」は、彼らとはすぐには会話が成り立ちません。みなさん、楽しそうに「会話」をして、展覧会を楽しんでいるのに、僕だけ彼らの輪に入れなかった。その経験を経て、ふと思いました。
僕の住む町にもコミュニケーションの外にいて、寂しい思いをしている人がいるのではないか。〈やまなみ工房〉を利用する人たちも、一歩外の世界に出たら寂しい思いをしてはいないか。
相手のことを、もっと知り、思いやらなければと感じました。普段と違う環境に身を置くことで気づいた気持ちでした。