「ダイバーシティ」とはいったいどんな意味なのでしょうか。検索すると、性別、人種、国籍、宗教、年齢、障害等の差異を受け入れる、あるいは、多様性などが出てきます。しかし、どんな分野でも、違いを理解しあうのは、けっこう難しいのも確かなこと。ではどうすればよいか。私は「愛」にこそ、それを解く鍵があると考えます。人間が素朴に持つ「愛」という感情。いま「ダイバーシティ」が求められているなら、根底には、それがあってしかるべきです。「愛」にこそ人間の違いを肯定する力があると思います。そこで今回は、自分が子どもに読みきかせた経験上、「愛」を伝えている絵本を3冊選んでみました。
友人への愛
アフガニスタンの難民キャンプ。そこで知り合う2人の少女。2人には、ともに戦争で家族を亡くした経験がありました。履く靴もありません。ある日、1足のサンダルが救援物資として入ってきたとき、2人は、1足ずつ履いて「ともだちのしるし」にします。しかしひとりはアメリカに行くことに。お別れの日、涙を浮かべながら、お互い1足ずつ持ち合うことを決めます。サンダルには、長く忘れていた「愛」が込められていたのです。ささやかながら、だからこそ、大きく育っていく「愛」の可能性が感じられます。
カレン・リン・ウィリアムズ[作]、カードラ・モハメッド[絵]
『ともだちのしるしだよ』(岩崎書店、2009年)
弱者への愛
多摩動物公園で実際にあったことを題材にした物語。病気のゾウは、薬をあげても受け付けず、注射をすることも難しく、飼育員もどうすることもできません。ゾウは病気のときはずっと立っています。そんなある日、病気のゾウを2頭のゾウが、両側から立って支えあいます。雨の日も風の日も、それは1カ月も続きました。そして病気は回復。弱者を支えようとするゾウの気持ちは、子どもばかりでなく、大人にも十分に伝わってきます。弱者を支えることが大切なのは当然ですが、その姿が美しく尊いということも付け加えておきたいところです。
わしおとしこ[作]、遠山繁年[絵]
『ともだちをたすけたゾウたち』(教育画劇、2002年)
人間への愛
もし子どもがいたら、この絵本を読んだとき、生まれて初めて対面したときのことを思い出すでしょう。泣いていたこと、息をしていたこと、眠っていたこと。その愛おしさ。あるいは、自分の親がきっと感じたであろう自分への愛を知るかもしれません。そのおもいは自分だけでなく、全ての人間に共有したものだと気付くとき、私たちの前に希望があらわれます。そこに「ダイバーシティ」が現実のものとなって立ち現れてきます。人間の持つ愛を実感できる絵本。
アリスン・マギー[作]、ピーター・レイノルズ[絵]
『ちいさなあなたへ』(主婦の友社、2008年)