本展は、「障害のある人々から生み出されるアートは根源的な本能に基づいた“真摯な表現”であり、現代社会の抱える課題を解決していくためのヒントとなり得る Resources(資源)である」との考えに立ち、テーマを「生き物」に絞った展覧会です。
音、におい、空気、風など、見えないけれど存在するもの。それらは暮らしの中に常にありますが、見えないが故にその存在を気に留める機会はあまり多くありません。また、それらは音符にしたり色を付けたりするなどで、目に見えるようになることがあります。見ようとしてみる、考えてみる。ほんの少し違った角度からアプローチしてみる。それは、日常を変える可能性を秘めるとともに、何かの課題に向かう時に大きなヒントを与えてくれる一つになり得るかもしれません。
本展で紹介している作品は、アーティストや作り手個人の感覚を通じ、表現されたものです。自分と違うその感覚は、もしかしたらあなたにとってはちょっぴり“へん”かもしれません。けれど、その新しい感覚が生活の中にわくわくする機会を増やしてくれるでしょう。
【出展作家】
石井葉子
1977年 広島県福山市生まれ 高知市在住
2002年 高知大学大学院 美術教育専修 修了
2000~2004 年 “神””ヒト”をテーマに、鑑賞者が操作・体験する事で完成する大型の参加型作品を発表。
2003 年 “土地に憑く者”としての異界の者(神・妖怪・蟲等)をモチーフに、”場所由来”の作品を制作。
2006~2018年 作品 “妖怪イヌジマ”をコミュニケーションツールとし、犬島を基点に犬島を思う人とその思いを循環させるプロジェクト「妖怪イヌジマプロジェクト」をWEB 上や犬島里帰り上陸の現地企画などを舞台に展開。
岡田文
1950年 高知市生まれ 高知市在住
2011年よりアートセンター画楽所属
エイブルアートカンパニー第8期登録作家
お気に入りの本をじっくりと選び、写真や絵の中から本人にしか見えない「なにか」の姿を発見し「ここにかくれちゅう」と笑いながら、画用紙を埋めていく。水彩絵具が混ざることでつぎつぎ現れる色のフシギを楽しみ、塗ると画面が「きれいになる」という。
絵を描くことは、気負うことなく楽しめる「いるもの」生活の一部であり、なくてはならない大切な時間になっている。
鎌倉 あけみ
1964年 高知市生まれ 高知市在住
2004年よりアートセンター画楽所属
絵を描く活動が減ってからも、じっとしていられず暇をつぶせるようなものを探す日々が続く。
そんな中、インテリアとしての繋がらない黒電話で母と会話がはじまる。つながっているのではないか…と思わせる受け答え。やさしく、時に激しく感情をぶつけ、そのあとはしばらく放心状態。気を取り直し2度目の電話で「うんうん」と言った後に「さっきはごめんよー」と会話がつづく。
思いもよらぬ展開にお腹がよじれるほど笑いを誘ったり、繋がらない電話に込めた母への思いが切なくキュッとなる。
齋藤陽道
1983年 東京都生まれ 東京都在住 写真家
都立石神井ろう学校卒業。陽ノ道として障害者プロレス団体「ドッグレッグス」所属。
2010年 写真新世紀優秀賞。
2013年 ワタリウム美術館 にて新鋭写真家として異例の大型個展を開催。
近年はMr.Children やクラムボンといったミュージシャン、俳優窪田正孝 との作品など注目を集める。
2017年に、7年にわたる写真プロジェクト「神話」を発表。
2018年7月『声めぐり』(晶文社)、『異なり記念日』(医学書院)を同時刊行。写真集に『感動』(赤々舎)、『宝箱』(ぴあ)、『それでもそれでもそれでも』(ナナロク社)がある。
杉原美和
1965年 高知市生まれ 高知市在住
2004年よりアートセンター画楽所属
彼女の作品づくりは、絵本や画集などをじっくり見てお気に入りの絵や写真を選ぶことから始まる。何を描くかが決まると、リズムよく鉛筆でスケッチを楽しむ。半日かけて細かく書き込んでいても、気に入らないとあっさりと全部消して、再び挑戦。決して投げ出すことはない。色使いは暖色系を好み、並べられたサインペンの端から順番に塗っていく。スケッチと彩色した後の絵の変化も楽しい。繰り返すこと、続ける事の大切さを知っているかのように、感じる事を素直に表現している。