本展覧会では、2010年にフランス・パリ市内の美術館で開催された「アール・ブリュット・ジャポネ」展の出品作家のうち、6名の作家の作品が展示されます。「アール・ブリュット」とは、1940年代に画家ジャン・デュビュッフェ(1901-1985)が提唱した「生の芸術」という意味の言葉です。デュビュッフェがその価値を見出した「職業的芸術界とは無縁の無名の人々の手になる作品」、そうした創作活動は現在の日本においても数多く存在しています。途方もない切実さをもっているような作品、ユーモラスな表情をみせる作品、普段の暮らしに近いようでいて何か日常を越えた迫力を備えた、共感と驚きが同時に去来する感覚を抱く作品。6名6様の作品を都庁の45階という素晴らしいロケーションで、東京上空の見晴らしとともにご鑑賞いただけます。
戸來貴規
1980年生まれ
四角形が並ぶドローイング風の作品は、作者が綴り続けた日記です。日付や温度、天気、食べたものが独自の文字で書かれています。日記という極私的なかたちで、施設職員が発見するまで密やかに発揮され続けた独特の感性です。
村田清司
1952年生まれ
はがき大の明るい色づかいの作品には、顔が多く描かれています。いずれも、朗らかでチャーミングな表情。初期には油性ペンを使っていましたが、パステルを多用するようになりさらにやわらかい印象が増しました。村田の作品に作家の田島征三氏がことばを付けて、絵本としても出版されています。
松本寛庸
1992年生まれ
何度も反復されるモチーフが心地よいリズムで画面を構成し、それぞれカラフルに色彩を放っています。構図や色彩を楽しむ作者の様子が想像できるような描きぶりです。
吉川秀昭
1970年生まれ
陶士の表面に走る線は、実は多くの点の密集です。その点が小さな無数の顔なのだから驚かされます。微細な顔の集合がときに全体として、ひとつの模様(あるいは顔らしきもの)を描き出しています。
八島孝一
1963年生まれ
作品の素材になる品々は作者自身が路地で拾ったものだそうです。ものの組み合わせが詩のような美しさをもち、それぞれの物品は機能を失って依然、‘‘モノフェチ“なる作者の感性を刺激してならないのでしょう。
吉澤健
1965年生まれ
雑誌の中面や記事をコラージュして作った自作ノートにびっしりと記されているのは、作者がまちで見かけた企業名や自身の行動です。20年以上続けられたこの習慣は、作者の日常に組み込まれ、生活の一部となっています。