誰もが参加できるインクルーシブな社会の実現を目指し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて推進するプロジェクト「日本財団DIVERSITY IN THE ARTS(ダイバーシティ・イン・ジ・アーツ)」の初となる企画展「ミュージアム・オブ・トゥギャザー」が、2017年10月、東京のスパイラルガーデン(スパイラル1F)にて開催されました。
会場では障害のある作家や現代美術家、また香取慎吾さんを含む23の作品やアーカイブ資料など、約500点が展示され、連日多くの来場者で賑わいました。多くの鑑賞者にひらかれた展覧会として、誰でも楽しく、居心地よく過ごせる環境を目指した本展では、キュレーター、建築家、デザイナー、編集者、美術館職員、障害のある方、そして福祉関係者など、領域を超えて多くの立場から参加する人々で企画チームがつくられ、コミュニケーションを重ね双方向に学び合いながら、展覧会のあり方を模索して準備を重ねてきました。
障害のある方と共に鑑賞を楽しむアクセス・アート・プログラムでは、音声、手話、筆談など、さまざまなコミュニケーション方法で、感じたこと、考えたことを伝え、分かり合う「聞こえない人とつくる「対話」をテーマとしたワークショップ」、作品や空間について「見えていること」と「見えていないこと」を言葉にしながら印象や考えを語り合う「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」を実施。その他にも、おもに知的障害、発達障害、精神障害のある方のうち、感覚や知覚などに過敏さがある方を対象とし、照明を落とし音に配慮した鑑賞時間「クワイエットアワー」の試みや、知的障害、発達障害、精神障害のある方と展覧会の楽しみ方について考えるワークショップなどを実施しました。
多くの来場者が参加するためアクセシビリティに考慮した環境づくりにも力を入れ、車いす利用者、視覚や聴覚に障害のある方たちと検証を重ね、既存の会場には、勾配に配慮したスロープを設けました。更に、作品だけでなく、車椅子の高さに合わせた展示や、鑑賞中に休憩が必要となる方のために、静かに過ごせる部屋「クワイエット・ルーム」の設置を試みたことも特徴的でした。
さまざまな方のニーズに応じて会場やサービスの案内をする総合受付「ウェルカム・ポイント」では音声で作品を解説する「オーディオ・ディスクリプション」や、展覧会場を出た後も楽しめるよう、会場周辺の飲食店などのバリア情報を届けるアプリ「Bmaps(ビーマップ)」で情報提供するなど、アクセシブルな体制を整えました。会場に立つスタッフは会期前にユニバーサルマナー研修を受け、展覧会の案内や作品鑑賞を積極的にサポートしました。
会場中心に位置するスパイラルカフェ(スパイラル1F)では、フードディレクターや菓子研究家と視覚に障害がある方との対話の中から考案された特別メニューを提供し、来場者の方々がさまざまな視点や感覚で展覧会を楽しめる工夫をこらしました。
会期中10月22日には関連するフォーラムをスパイラルホール(スパイラル3F)で開催。展覧会の共通のキーワードとなる「アート」、「アーキテクチャー」、「アクセス・アート・プログラム」の3部構成で進行し、キュレーターや建築家、当事者らのチームに、出展作家が加わり、これまでの取り組みや来場者の反応などを報告しました。台風が接近し雨が強まる中、約160人が参加し、討論を熱心に聞かれていました。また、会期中は、会場内でもキュレーターや参加作家と展覧会や作品の見どころを紹介するギャラリートークを実施しました。
わずか19日間の開催でしたが、初日10月13日は秋篠宮妃殿下、会期終了前日の10月30日は安倍晋三首相にご視察いただき、参加作家の方々に作品についてご紹介いただきました。多くのメディア掲載やSNSでの周知によって、大変多くの方が来場され、参加作家を含めて沢山の障害のある方も会場へ足を運んでくださいました。
本展覧会の時間が多くの方への関心や気付きに繋がり、多様な表現活動や価値観が、この先の2020年そして2020年以降に向けて更に拡がっていくことが期待されると共に、日本財団DIVERSITY IN THE ARTSとして次なる企画へとつなげていきます。
【参加作家】
青山 悟、占部史人、Emi、川内理香子、クリスチャン・ヒダカ、小松和子、清水千秋、清水ちはる、土屋信子、土屋正彦、寺口さやか、ピーター・マクドナルド、藤岡祐機、古谷秀男、堀江佳世、松永 直、水内正隆、みずのき絵画教室、森 雅樹、八島孝一、竜之介、渡邊義紘、香取慎吾