東京都と公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京による、「だれもが文化でつながる国際会議2024」が、10月29日(火)から11月3日(日・祝)まで、東京国際フォーラムにて開催されます。パラリンピックのレガシーとして、芸術文化による共生社会実現のため、国内外で活動する多くの人たちとのネットワークを構築し、先進的な取組を東京から世界に発信します。
本会議は、国内外のさまざまな視点から文化と居場所について考え議論する「カンファレンス」、国内外のアーティストの作品展示、ワークショップやトークで展開する「ショーケース」、参加者・来場者の交流をうながす「ネットワーキング」、さまざまな世界のコミュニケーションのあり方を探求する「コミュニケーションラボ」の4つの柱で構成されています。来年、「東京2025デフリンピック」※が開催されることから、ろう文化にも焦点を当てながら、どなたでも参加していただける多彩なプログラムが展開されます。
テーマは「文化と居場所―アートが開く新たな未来」です。多様化・複雑化する現代社会では、私たちの誰もが「居場所」を必要としています。「安心していられる居場所」があることを「ウェルビーイング」のひとつのあり方と考え、国内外の参加者たちと議論します。
※東京2025デフリンピック(2025年11月15日から26日)―デフアスリートを対象とした国際総合スポーツ競技大会。日本で初めての開催。デフ(Deaf)は英語で「耳がきこえない」という意味。
開会式
日時:11月1日(金)午前10時から午前11時30分(午前9時30分開場)
会場:東京国際フォーラム ホールB5
登壇者:小池百合子(東京都知事)、日枝 久(東京都歴史文化財団 理事長)、日比野克彦(東京藝術大学長)、片岡真実(森美術館館長)、大杉 豊(筑波技術大学障害者高等教育研究支援センター教授、国際ろう者スポーツ委員会副会長)、長濱ねる(俳優(東京2025デフリンピック応援アンバサダー))、デイビッド・デ・キーザー(「クランドゥイユ」ディレクター)、リサ・フィリップス(ニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アート館長)
プログラム
01カンファレンス
<招待講演「Clin d’Oeil (クランドゥイユ) ろう者の祭典」>
登壇者:デイビッド・デ・キーザー(「クランドゥイユ」ディレクター)
ろう者のパフォーマーと観客が集まるフランスのフェスティバル「クランドゥイユ」ディレクターによる招待講演。今年で11回目の開催となるクランドゥイユの実践を通して学び見えてきた、さまざまな文化で居場所をつくる際の向き合い方について考える。会期中は、デイビッド・デ・キーザー本人によるワークショップも実施する。
<基調講演「共にいるための場を創る―対話とアウトリーチから学んだこと」>
登壇者:梶谷真司(東京大学大学院総合文化研究科教授、共生のための国際哲学研究センター(UTCP)センター長)
昨今、多文化共生やダイバーシティ&インクルージョンといった言葉がよく聞かれる中、そもそも共にいるとは、どういうことなのか。どうすれば私たちは、自分自身でいられるところを見つけられるのか―これらの問いについて、対話とアウトリーチ活動の経験から学んだことを、みなさんとシェアしていく。
<セッション>
セッション① はたらく人とウェルビーイング
一人ひとりが異なる存在であるという「他者性」の前提認識が希薄な日本社会において、同一性を求められることに生きづらさを抱える人々が散見される。そのような社会に対しアートが担うべき役割は、誰しもがウェルビーイングを見出せる居場所、活動を用意することではないか。ウェルビーイングとアートの関係性について実践と研究の両面で先進的な実績を持つ豪州のゲストと共に、ウェルビーイングのための芸術文化の役割を国内の各セクターのメンバーと議論する。
登壇者:栗栖良依(パラ・クリエイティブ プロデューサー/ディレクター)、内田まほろ(JR東日本文化創造財団 TAKANAWA GATEWAY CITY 文化創造棟準備室長)、ジョージー・マクリーン(クリエイティブ・オーストラリア 開発およびパートナーシップ担当エグゼクティブディレクター)、松田朋春(プランナー、詩人)
セッション② 日常とアートと教育
芸術文化の社会的役割、特に人々の日常生活に近いところに作用する活動の必要性を議論する。教育現場としての芸術大学や実践の場としての美術館などのアートセクターが、福祉、医療、テクノロジーといった異なる分野と連携し地域で共創する。そのような共創の場を生み出すために、芸術文化に求められるこれからの役割や活動は何かを探る。
登壇者:日比野克彦(東京藝術大学長)、リサ・フィリップス(ニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アート館長)、妹島和世(東京都庭園美術館館長)
セッション③ 文化機構の社会参画
多文化共生は現代社会において世界が共通して取り組む社会課題であり、東京も例外ではない。このような社会課題の解決に文化機構が関わる場合、アートに対する新しい認識と価値を持って地域と繋がることから始まるのではないか。東京という大都市圏において、文化機構がどのように多文化共生の課題に取り組むべきか。大都市圏における美術館や芸術祭などで実践経験のあるゲストを迎え、東京がこれから取るべきアクションについて議論を深める。
登壇者:片岡真実(森美術館館長)、ジュン・ヤップ(シンガポール美術館学芸部長)、コズミン・コスティナシュ(世界文化の家シニアキュレーター)
セッション④ 「分かり合えない」を分かち合う
共生社会を実現するには、他者への共感、尊厳を重んじることを前提とするとしたら、「分かり合えない」ことに絶望するのではなく、その事実を踏まえた対話から始まると考えるべきだろう。共感の前に立ちはだかるさまざまな壁を乗り越える術を獲得するには何が必要となるのか。ケア、表現、社会実践の文脈を持つ登壇者が個人的経験を交えて対話し、共感のあり方を追求する。
登壇者:志村季世恵(バースセラピスト、ダイアログ・ジャパン・ソサエティ代表理事)、アンドレアス・ハイネッケ(ダイアローグ・ソーシャル・エンタープライズ創設者)、マンディ・ハーヴェイ(シンガーソングライター)
クロージングセッション 文化と居場所 居場所をつくるためのアクション
4つのセッションを受けて、居場所をつくるために求められるネクストビジョンを語る。
登壇者:梶谷真司(東京大学大学院総合文化研究科教授)、デイビッド・デ・キーザー(クランドゥイユ ディレクター)、モーウェナ・コレット(コンサルタント、ディレクター)、熊倉純子(東京藝術大学大学院国際文化創造研究科長、教授)
<事例発表>
事例発表①
- 演劇で問う社会課題「Both Sides, Now」での取組から
シンガポールの社会参画型の劇団「ドラマボックス」における、社会課題に向き合う方法の一つとしての演劇実践例を発表する。過去10年にわたって展開されてきた、人々に尊厳ある最期と死について考える機会を提供するプロジェクト「Both Sides, Now」に焦点を当てる。
登壇者:コク・ヘン・ルン(ドラマボックス創設者) - ろう者のオンガクを追求する
映画『LISTEN リッスン』以降、日本手話のもつ「張り」「弛み」をもとに、ろう者の「オンガク」を追求する自身の研究成果について発表する。
登壇者:牧原依里(一般社団法人日本ろう芸術協会代表理事、映画作家、アーティスト) - 居場所を創る建築家
高齢者介護施設「春日台センターセンター」の事例を中心に、地域に根ざす生活、その営みや関係性を丁寧に汲み取る建築の視点から、文化の成り立ちを考える。
登壇者:金野千恵(建築家)
事例発表②
- KINOミーティングの手法
日本に住む海外にもルーツを持つ人たちが協働するプロジェクト「KINOミーティング」で制作された『ニュー・トーキョー・ツアー』を上映し、監督とプロジェクト主宰者がその手法がもたらす可能性について語る。
登壇者:阿部航太(デザイナー、文化人類学専攻)、テイ・ウシン(翻訳者、映画監督)
<分科会>
分科会①演劇でつなぐ多文化社会
ドイツのマンハイム国立劇場で実践している、多様な背景をもつ市民が参加するプロジェクトの事例や手法を学ぶ。言語や文化の違いにおける相互理解やサポートの促進をテーマに、海外にルーツをもつ人たちが参加しやすい演劇ワークショップの環境構築について、東京芸術劇場での取組なども踏まえて議論する。
登壇者:田室寿見子(東京芸術劇場)、ベアタ・アンナ・シュムッツ(マンハイム国立劇場 市民アンサンブル部門芸術監督)
モデレーター:ミン・ジンキョン(北海道教育大学岩見沢校芸術文化政策研究室准教授)
分科会②劇場体験を拡張させる鑑賞・参画サポートのデザイン
東京文化会館社会共生プロジェクトチームや「リラックス・パフォーマンス」での鑑賞サポートの取組、彩の国さいたま芸術劇場の「カンパニー・グランデ」における参画サポートの実践など、アクセシビリティ向上に奮闘する劇場の実践例を紹介し、体験の拡張について考察する。
登壇者:月橋朋子(東京文化会館)、請川幸子(彩の国さいたま芸術劇場)
モデレーター:中村よしき(東京文化会館)
分科会③アクセシビリティの向上と文化施設のみらい
東京都と東京都歴史文化財団の取組と日本科学未来館の実践をもとに、日本においてアクセシビリティの普及に長く関わる専門家を交え、アクセシビリティがもたらす文化の居場所としての“文化施設”のあり方を考える。
登壇者:駒井由理子(アーツカウンシル東京)、関根千佳(株式会社ユーディット会長)、佐野広大(日本科学未来館)
分科会④認知症と向き合うアート
認知症患者に向けた社会的処方箋実践のパイオニアである台湾の医師、地域で認知症を他者化しない社会のあり方を模索する社会福祉士と共に、認知症の人たちの社会参加のあり方にアートがもたらす役割について議論する。
登壇者:藤岡勇人(東京都美術館)、佐伯賢(ほうらい地域包括支援センター)、リウ・ジェンリャン(台北市立連合病院)
モデレーター:熊谷香寿美(東京都美術館)
分科会⑤共生する場のつくり方
ダウン症のこどもたちの居場所づくりやアーティストとの協働プロジェクトの事例として横浜のStudio oowaにフォーカスする。Studio oowaの活動実践を通して見えてきた展望や、保護者やサポートする人たちとのネットワークがもたらす可能性について報告する。
登壇者:加藤 甫(写真家、Studio oowa主宰)、小田井真美(さっぽろ天神山アートスタジオAIRディレクター)
分科会⑥インクルーシブな劇場をつくるためには
国内外の劇場では、より多様な人たちが鑑賞・創造・発表を行うための取組が行われている。インクルーシブな舞台づくりの最前線で活躍する舞台技術者と、障害のある方など多様な背景をもつ人びとの表現活動に着目した研究に取り組む研究者の立場から、インクルーシブな劇場をつくるために必要なことを考える。
登壇者:長津結一郎(九州大学大学院准教授)、平井 徹(KAAT神奈川芸術劇場)
分科会⑦ろう者による芸術の手話解説-イギリスのBSLガイドの事例に学ぶ
イギリスで行われている、ろう者による鑑賞ツアー「BSL(=British Sign Language)ガイド」の事例から、日本における芸術文化の享受のあり方について議論する。また、芸術領域でろう者が手話で語ること、そしてこれからどのように美術館などの文化施設と関わっていくことを理想とするか考える。
登壇者:管野奈津美(Re; Signing Project)、南村千里(パフォーマンスアーティスト、芸術解説者)
分科会⑧文化施設のアクセシビリティ―オランダでの取組
アムステルダム国立美術館でのアクセシビリティの課題に取り組む事例から、オランダにおけるアクセシビリティの定義の紹介を踏まえ、美術館でのアクセシビリティに求められる社会的役割について考察する。
登壇者:佐藤麻衣子(アートエデュケーター)、カテライン・デネカンプ(アムステルダム国立美術館)
モデレーター:八巻香澄(東京都現代美術館)
02ショーケース
<作品展示>
- 編み物作品―伊勢克也(アーティスト)
福祉施設の高齢者たちと対話してきた活動で共に制作した編み物作品。 - 石の彫刻作品―長谷川さち(彫刻家)
視覚だけでなく触覚でも向き合える彫刻作品。 - カルメン・パパリア×ココテープ ―加藤 甫(写真家)、森内康博(映像作家)
アーティスト・イン・レジデンスでの日本滞在において、視覚障害者の歩行をガイドするプロダクト「ココテープ」を使用した生活の記録。 - 造形作品―鈴木康広(アーティスト)
日常の見慣れた事象に新鮮な切り口を与える作品によって世界の見方を問いかけるアーティストによる作品展示。
<上映・トークほか>
- ドキュメンタリー「Homescape Dialogue」上映・トーク
海外にルーツをもち日本で社会生活を送る人たち「Home」を探るドキュメンタリー。上映後、ゲストに芹沢高志(P3 art and environment)ほかを迎え対談する。 - 春風亭昇吉 落語会
視覚に障害がある人でも楽しめる絵本の制作や、落語ユニバーサルデザイン化推進協会の活動をする落語家による高座。 - 鈴木康広「ワークショップ 好きと嫌いの詩」
「あなたの好きなものはなんですか?あなたの嫌いなものはなんですか?」会場に集まった参加者の言葉を並べて詩をつくり、意味や価値が入れ替わる世界を体験し、作品をみんなで作っていく。
<機器展示・体験>
QDレーザ:視力に影響されない網膜投影を手軽に利用できる手持ち型の視覚支援デバイス
FILLTUNE:感音性難聴に効果が実証された唯一の聴覚サポート機器
WHILL:免許不要で歩道を走れる近距離モビリティ
03ネットワーキング
交流サロン
登壇者やゲストが登壇後に集まり、登壇者と来場者が交流し、ネットワークを醸成する場。
東京芸術文化相談サポートセンター「アートノト」出張相談コーナー
著作権や助成金、アクセシビリティなど、芸術文化に関するお悩み・困りごとについて、東京芸術文化相談サポートセンター「アートノト」の相談員が、解決に向けてお手伝いする。
04コミュニケーションラボ
異言語脱出ゲーム「CAN YOU HELP THE ANDROID?」
参加者が手話や音声言語でコミュニケーションをとり、アンドロイドを救うために制限時間内に謎を解き、ミッションクリアを目指す謎解きゲーム。
<ふれてみる>ってどういうこと?
視覚に障害がある人の美術教育のあゆみをふまえ、目隠しをした状態で触図やオブジェを触察し、触覚という感覚をあらためて見直すワークショップ。聴いて触って体験する落語絵本なども展示。
わたしの世界・あなたの世界
触察、音声・視覚言語、会話、文化的背景の違いなど多角的な視点をもとにさまざまなワークショップを体験し、試行錯誤しながら相互理解を深める。
デフリンピックの紹介(東京都生活文化スポーツ局国際スポーツ事業部)
東京2025デフリンピック公式マスコット「ゆりーと」のモニュメントや、競技を体験できるコーナー、国際手話のほか視覚による情報保障が特徴的なデフリンピックについての展示等。
<レクチャー・ワークショップ>
東京藝術大学 「共生社会」をつくるアートコミュニケーション共創拠点プロジェクト トークイベント
東京藝術大学が取り組む「共生社会をつくるアートコミュニケーション」事業が目指す、「文化処方の育み方と開き方」を発表。
伝わる! つながる! やさしい日本語ワークショップ(東京都つながり創生財団)
多文化共生社会の共通言語とされる「やさしい日本語」を体験するワークショップ。外国人参加者と一緒にワークを楽しみながら、やさしく伝えるコツを学ぶ。
デイビッド・デ・キーザーによるリーダーシップワークショップ
ろう者と聴者が協働するフランスのフェスティバル「クランドゥイユ」のディレクターによるレクチャー形式のワークショップ。イベントにおけるチームビルディングやコミュニケーションの取り方、また言語が異なる者同士がどのようにモチベーションを保つかなど、リーダーシップの在り方について学ぶ。
クリエイティブ・ウェルビーイング・トーキョーとは
芸術文化の力や都立文化施設の資源を活用し、高齢化や共生社会など、東京の社会課題解決への貢献を目指し、高齢者、障害者、外国人、乳幼児等を対象者に「アクセシビリティ向上」と「鑑賞・創作・発表機会の拡大」に取り組むプロジェクト。本プロジェクトでは、都立文化施設の情報アクセシビリティ環境を整備し、障害や年齢等を問わずあらゆる人が文化芸術を鑑賞するとともに、参加・創造するためのプログラムを実施しています。