自然とともに暮らし、その尊さを伝えてきたデザイナー、ヨーガン レールが「最後の仕事」として選んだのは、海岸に打ち寄せられた廃品のプラスティックから美しい照明を作り出すことでした。
ヨーガンが晩年移住した石垣島の浜辺には毎日大量のゴミが流れ着いていました。プラスティック製品のなれの果て、発泡スチロールの切れ端、ペットボトルのふた、洗剤の容器や子どものおもちゃなど…どれも決して自然に還ることのないゴミの山でした。美しい海岸がゴミであふれかえる 様に悲観し、人間が招く「文明の終わり」を感じながら毎日ゴミを拾い集めていたヨーガンは、ある時から、集めた醜いゴミを色ごとに分類し、そこから美しいものを作り出すことにしました。ただゴミの山を示して自然破壊への警鐘を鳴らすのではなく、そこから美しくかつもう一度人の役にたつ実用的なものに変えることは、ヨーガンのデザイナーとしての小さな抵抗であり「最後の仕事」となりました。ゴミの山から生まれた大量のランプは美しく光り輝き、ヨーガンの軽やかで強いメッセージを発します。
この展覧会では、これらの照明と共に、ヨーガンがその唯一無二の美しさに魅了され、長い時間をかけて拾い集めた、ババグーリ/ 瑪瑙石を展示しています。
ヨーガン レール(Jurgen Lehl )
1944年生まれ、ドイツ人
1971年に来日、ヨーガン レール社を設立。オリジナルのテキスタイルやジュエリー、または家具や器など幅広いデザインを手がける。2006年、環境に配慮し、手仕事のものづくりを大事にしたブランド、Babaghuri(ババグーリ)を始める。2014年、逝去。