盲目の超少年は かなたをのぞみ よろよろ進む
東大阪を縦走する鉄道線の駅名である「俊徳道」。この駅名が《俊徳丸伝説》に由来することをご存じでしょうか?
本展では、鉄道玩具のプラスチックレールをつなげ、青いラインが空間中を占拠してゆくインスタレーションで注目される現代アーティスト・中野裕介/パラモデルが、自身の出身地である東大阪に伝わる《俊徳丸伝説》をモチーフに制作した作品を展示します。
中野は、ユニット活動以前から欠如と創造の関係に興味をもち、地元の《俊徳丸伝説》に出会ってから十数年にわたり、リサーチや作品制作を続けてきました。
中野が壁や床に這わせる青いレールに完成はなく、《俊徳丸伝説》にまつわる芸能や文学をもとに制作した巨大なドローイングや複数の映像を連結させながら、東大阪を縦横に走る「道」となり、河内平野を蛇行する「川」となって、東大阪市民美術センターを架空の巨大なまちへと変貌させてゆくことでしょう。
過去と現在、現実と想像が交錯する作品空間の中で、目が見えない俊徳丸がよろよろと、しかし健気に「俊徳道」を歩く姿を想像しながら、欠如や障害が創造の源泉となりうることを感じていただければ幸いです。
※「よろぼう」とは、「よろよろ歩く」という意味の古語です。
《俊徳丸伝説》とは
河内国高安(現在の八尾市高安)の長者の息子・俊徳丸はあるとき、失明し、病に侵され、天王寺に逃れます。よろめきながら歩き、ひん死ですごす中、観音に祈ることにより病が癒えるという物話で、この伝説をもとに能楽『弱法師』、説経節『しんとく丸』、人形浄瑠璃や歌舞伎の『摂州合邦辻』といったさまざまな古典芸能や、三島由紀夫の戯曲集『近代能楽集』、寺山修司の舞台作品『身毒丸』などが生まれました。盲目の俊徳丸が高安から四天王寺へ行き来したが「俊徳街道」と言われています。
中野裕介/パラモデル
1976年 東大阪生まれ。2002年 京都市立芸術大学大学院 絵画専攻(日本画) 修了。03年 同大学の林泰彦とアートユニット「パラモデル」結成、メタフィジカルな「模型遊び」をテーマに多様な形式の作品を発表。11~17年の図書館勤務を経た現在の個人活動では、描画やテキスト・空間表現を軸に、文学・哲学・マンガ・建築・郷土文化・古典芸能など、古今の書物を横断し題材とする創作を続ける。単著に『かなたをよむ:海と空のあいだのP』(P出版 24年)『まちがeる読み、iかれた挿し絵 中野裕介/パラモデル 2010-2020』(青幻舎 21年)。京都精華大学芸術学部教授。
近年の個展に、22年「かなたをよむ:海と空のあいだのP」(不知火美術館・図書館/熊本)、21年「まTiGerる読み、いかReた挿し絵」(高松市美術館/香川)、18年「まちがeる読み、iかれた挿し絵」(MORI YU GALLERY/京都)、常設展示に、23年「わすれたかなたの わすれへん回路の話」(石切回廊/大阪)。ユニット名義の個展に、13年「パラの模型/ぼくらの空中楼閣」(銀座メゾンエルメス フォーラム)、グループ展に、14年「MOTアニュアル2014 フラグメント―未完のはじまり」(東京都現代美術館)、11年「世界制作の方法」(国立国際美術館/大阪)など多数。
関連イベント
①アーティストトーク
日時:4月28日(日)午後2時から午後3時
◇参加無料/申込不要
②ライヴ+トーク「《俊徳道・俊徳丸》をきく ▷ かたる」
琵琶による新曲『俊徳丸』の演奏と「俊徳丸伝説」に関するトークイベント
日時:5月3日(金・祝)午後2時から午後4時
出演:荻山泊水(錦心流薩摩琵琶奏者)、足代健二郎・坂上弘子・杉山三記雄(郷土史研究家)、中野裕介/パラモデル
会場:東大阪市民美術センター 第1・2展示室、特別室
定員:80人(特別室)
◇参加無料/申込不要
③学芸員によるギャラリートーク
日時:5月4日(土・祝)午後2時から午後3時
◇参加無料/申込不要
④常設ワークショップ「青くてあおく、長いながい、ふしぎな《しゅんとく》道をもっとひろげよう」
ワークショップ「青くてあおく、長いながい、ふしぎな《しゅんとく道》をひろげよう」の成果物に、参加者が玩具のレールを好きな箇所につなげて広げていきます。
日時:4月28日(日)~5月12日(日)の土・日・祝
⑤謎解きゲーム「しゅんとく丸の七つ道具を探せ!」
作品の中に隠されたしゅんとく丸のアイテムを探そう。
日時:会期中の土・日・祝
◇参加無料/申込不要、先着150人
コラボレーション展示
東大阪市内の障害者生活介護事業「アトリエライプハウス」と中野裕介/パラモデルによるコラボレーション展示。
日時:4月28日(日)から5月12日(日)
会場:東大阪市民美術センター 1階常設スペース