それぞれの確かな日常
大きなものに文脈化することのできない、それぞれの「確かな」日常に焦点をあて、3名の作家と1組の作品や活動が紹介されます。身近な家族との関係に迫るパフォーマンス、ある食料品に対する愛着、近隣地域のゴミ拾い、日常の出来事から生まれた詩、現代の住居や生活様式を問い直す試みなど、表現のあり方は作家それぞれにユニークです。作品には表現者それぞれにとって最も親密で、確かなものが共棲しています。かれらの「確かさ」に触れることで、鑑賞者もまたそれぞれの「確かさ」とはなにかを問い直す機会となります。
初公開の新作オブジェ、インスタントラーメンが壁一面を覆うインスタレーション、活動記録写真やインタビュー映像の上映など、みどころが詰まった展示です。
出展作家
折元立身(ORIMOTO Tatsumi)1946 –
神奈川県川崎市生まれ。現代美術の前線で40年近く活躍する現代美術家。顔にパンを巻き付け街中に繰り出すパフォーマンス「パン人間」や自身の母の介護を作品とする「アート・ママ」など、生活と芸術の境界を揺るがしながら、コミュニケーションのあり方を愛とユーモアを交えて問いかける作風が国際的に高い評価を受けている。近年の主な個展に「折元立身-昔と今-」(尾道市立美術館[広島]、2018年)など、国内外の美術館での展示歴が多数ある。
酒井美穂子(SAKAI Mihoko)1979 –
滋賀県生まれ。1996年から「やまなみ工房」に所属している。酒井は28年以上、どこであってもだれと居ようとも、即席麺「サッポロ一番しょうゆ味」を片時も放さない。それを食べるわけでもなく、ただ握り、ビニールの擦れる音を聞き、微かな反射を眺めつづけている。人と物との間に流れる時間や無言のやり取りは、酒井にとってのかけがえのない瞬間を感じさせる。近年の展示に「無意味、のようなもの」(はじまりの美術館[福島]、2018年)などがある。
スウィング(Swing)2006 –
スウィングは2006年より京都にて活動を開始した、障害のある人ない人およそ30名が働く福祉施設。既存の仕事観や芸術観にとらわれない自由な仕事や表現活動を基軸とした事業を行っている。清掃活動「ゴミコロリ」、絵画や詩やコラージュの創作活動「オレたちひょうげん族」のほか、展覧会の実施やフリーペーパーの出版、ラジオ配信など、自主的な発信を伴う活動は多岐にわたる。近年の展示に「Swing×成田舞×片山達貴 展覧会『blue vol.2 ― 捨てられないものが物語ること』」(THEATRE E9 KYOTO[京都]、2022年)などがある。
村上 慧(MURAKAMI Satoshi)1988 –
東京都生まれ。2014年より、自作の発泡スチロール製の家を持ち運びながら国内外で移動生活を行うプロジェクト「移住を生活する」を行い、既存の住居や生活様式を問い直してきた現代美術作家。「住むことのパターン」を展開している村上は近年、落ち葉の発酵熱や気化熱の冷房効果を利用するなど、電気を使わない冷暖房空間の開発に取りくんでいる。近年の展示に「村上慧 移住を生活する」(金沢21世紀美術館[石川]、2020-21年)などがある。
関連イベント
トークイベント「山あり谷あり、それぞれの道のり」(手話通訳付き)
スウィング代表の木ノ戸昌幸氏とやまなみ工房施設長の山下完和氏による対談。
日時:2024年3月2日(土) 午後2時から3時30分まで
注)定員に達し、申し込みが終了しています。
ギャラリートーク(手話通訳付き)
担当学芸員による作品解説が行われます。
日時:2024年3月16日(土) 午後2時から2時30分まで
筆談鑑賞会(手話通訳付き)
ファシリテーターに小笠原新也氏(耳の聞こえない鑑賞案内人)を招いた筆談による鑑賞会。
聞こえない、聞こえにくい、聞こえるに関係なく、どなたでもご参加いただけます。
日時:2024年3月30日(土) 午後2時から午後4時まで
参加:10名(事前申込・先着順)
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トークイベント「土という場所」(手話通訳付き)
村上 慧と土の研究者の藤井一至氏による対談。
日時:2024年4月4日(木) 午後4時から午後5時30分まで
注)定員に達し、申し込みが終了しています。
スウィングメンバーによる似顔絵ワークショップ
Qの型破り似顔絵「アナタのその顔、メカにします。」
XLの超デフォルメ似顔絵「もしもアナタがプリミティヴだったら。。。」
日時:2024年4月6日(土) 午後2時から午後4時まで
トークイベント「折元立身の生きるアートとは?」(手話通訳付き)
インディペンデント・キュレーターの深川雅文氏と本展担当学芸員による対談。
日時:2024年5月12日(日) 午後2時から午後3時30分まで
参加:20名(事前申込・先着順)
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