甲府盆地のど真ん中にある障害福祉サービス事業所〈みらいファーム〉。ラジオ体操をして、仕事をして、お昼休憩を挟み、また仕事をする.…。繰り返される⽇々に⽬を凝らし、仕事に取り組むさまを⾒つめていると、花を世話する、絵を描く、布を織る、その⼿つきに確かに「その⼈らしさ」が現れてきます。季節が移ろうように、少しずつ変化していく〈みらいファーム〉の⼈たち。友情、恋⼼、喪失とそこからの回復。他者との関わりの中で醸成されていく感情と⾔葉をカメラは丁寧に記録し、時に⼈⽣に思い悩みながら⽣きる等⾝⼤の姿を魅⼒的に描き出します。
〈みらいファーム〉を⾒守る富⼠⼭と、ふわふわとすべてを柔らかく包む綿という⼆つのモチーフから⽣まれた、カメラに映る全てを優しく⼒強く肯定するドキュメンタリー。「フジヤマコットントン」それは、何度も唱えたくなる幸福のおまじないです。
監督
青柳 拓
1993年、山梨県市川三郷町生まれ。日本映画大学に進学後、卒業制作の初監督作『ひいくんのあるく町』が2017年全国劇場公開。2020年短編『井戸ヲ、ホル。』、2021年に「山梨県重症心身障害児(者)を守る会」の企画・製作として短編『あゆみの時間』を製作。2021年にテレビ東京系列テレビ番組「ノンフェイクション」にて初のテレビディレクターを務める。2021年7月、監督2作目『東京自転車節』が全国劇場公開。『東京自転車節』はその後、ドイツ、イギリス、オーストラリア、ポーランドの映画祭でも上映。
監督からのメッセージ
「次回作は?」という問いに、すぐに頭に浮かんだのが⺟の職場である〈みらいファーム〉のことでした。古くから知っている⼤好きな⼈たちのことを思いながら、相模原障害者施設殺傷事件のことも考えていました。加害者の植松聖さんの「障害者は⽣きている価値がない」という⾔葉を、僕は僕の友⼈たち、つまり〈みらいファーム〉の⼈たちに向けられているように感じていたのです。そもそも「⽣きている価値がない」⼈間って本当にいるんでしょうか?僕は「いるかもしれない」と思いました。
前作『東京⾃転⾞節』で僕が観たのは嘘と欺瞞にまみれた世界でした。そこで僕⾃⾝、孤独感や絶望感を味わい、「どうにでもなれ」という破滅衝動に苛まれました。僕は「⾃分には価値がない」と考えたことが確かにあったのです。⼈間の価値とは何か。なぜ事件は起きたのか。考えながら撮影に挑んだけれど、でも、それは撮影を引き受けてくれた〈みらいファーム〉の⼈たちに失礼な態度でした。僕は⼈の価値を「ある/なし」の⼟俵に乗せない。⽬の前にいる⼈たちの魅⼒を、出演してくれた⼀⼈ひとりの⽇常の中にある「良い!」をみつめたい!それが『フジヤマコットントン』であり、僕のアンサーです。
劇場情報
2024年2月10日(土)より、ポレポレ東中野ほか全国公開
その後、横浜、川崎、静岡、長野、名古屋、大阪、京都、兵庫、島根、佐賀等全国各地で順次上映予定。
詳細は映画の公式サイトをご確認ください。
先行イベント開催
1月26日(金)に青柳拓監督と水道橋博士さん(漫才師)のトークつき特別先行上映が開催予定。
イベント詳細、お申し込みはspace&cafe ポレポレ坐のイベントページをご確認ください。