「やまがたのきざしとまなざし」は、山形県内の障害のある作家表現「きざし」と、それに寄りそう「まなざし」に焦点を当てた展覧会です。2019年から始まり、今回で6回目の開催となりました。
表現に寄りそう空間に着目、作品と共に、寄りそう人や活動を共にする仲間の言葉、ポートレートなどが展示されます。作家を取り巻く環境から、寄りそう「まなざし」を感じとることができます。展示をきっかけに、何気ない日々のなかにワクワクするような、表現のきざしをみつけるチカラ(まなざし)を意識するようになるかもしれません。
表現する人×寄りそう空間
小林達也(こばやしたつや)×ゆにぷろ
〈ゆにぷろ〉に入ると、区切られた個室のようなスペースがたくさんある。これは、利用者一人ひとりの特性に合わせて、居心地の良い環境で過ごせるために工夫された空間で、アトリエ活動に必要な道具や材料、こだわりのモノなどが置かれている。
〈ゆにぷろ〉に週1回通っている小林達也さんは、小さい頃から絵を描くのが好きだった。大きくなってからは、日々の生活の忙しさからか、昔ほど表現しないといられない切実さがなくなったからか、ほとんど絵を描かなくなったという。そんな時に、無理なくできる範囲で楽しめるものを、という家族からの希望も受けて、〈ゆにぷろ〉では1日30分のアート活動を始めた。興味を持ったら家でもできるようにと様々なテーマを設け、表現の幅が広がるように試行錯誤中。達也さんが週末家で撮っている「ヒゲ」の写真にも職員は目を向け、写真の印刷に同行するなど、幅広い支援を行っている。
言語でのコミュニケーションが難しい中、作品が入口となり、〈ゆにぷろ〉での生活や利用者の魅力を知ってもらえたら、という想いが職員にはあり、施設をひらいた展覧会を行うなどアート活動を少しずつ広げている。
小林達也
1986年生まれ。毎週月〜木曜日は就労施設のにこにこホーム、金曜日は〈ゆにぷろ〉に通っている。週末は自宅にて、黒いビニールテープでつくった「ヒゲ」を顔につけて写真を撮る活動を欠かさず行っている。好きなものは、お風呂、外食、水泳、タオルたたみ、笑点、好きなものの写真撮影など。テレビはYTSのみ鑑賞(朝の連ドラは別)。車の助手席に乗るときはかならずサングラスをかける。
荒木 咲(あらきさき)×らっふる
〈らっふる〉には、いつもにぎやかな笑い声が響いている。誰かのボケに誰かがツッコミをいれたり、冗談を言い合ったり、楽しげな言葉のキャッチボールが飛び交っている。日常のやり取りから生まれたユーモアたっぷりの言葉たちは、荒木咲さんの書の作品として現れている。作品が生まれる背景には、面白いと思った時に職員・利用者が共に楽しめるフラットな関係性があり、メンバーたちが互いの作品から影響を受け合う創作環境があり、やりたいと思った時にすぐに表現できる職員の細やかなサポートがある。とりわけ、「全体をウロウロして、冗談ばっかり言ってる」と言う支援員の日下部さんは、一人ひとりの言葉を拾い、さりげないパス回しをして、みんながのびのびと過ごせる環境を作り出している。
就労継続支援と生活介護、2つのサービスを行う〈らっふる〉。お菓子や織物などの商品作りに携わっていない生活介護のメンバーは、これまで外に出ていく機会が少なかったが、アート活動を通して、少しずつ外との繋がりが生まれている。アート作品が認められること、外に出ていくことを通して、利用者が一人の「私」として自信をつけていくきっかけになれば、と日下部さんは言う。
荒木 咲
1992年生まれ。「女神なんかじゃねえ」「あっちもこっちも オラいっぱいいっぱい」など、鋭い切れ味とユーモア溢れる作品は「きざしとまなざし2021」展で大賞を受賞。好きなことは、読書、ゲーム(動画)、テレビを観る、音楽を聴く、体を動かす、自分のペースで好きなことをする。かわいいものよりかっこいいほうが好き。
会場風景
巡回展のおしらせ
きざしとまなざし2023「やまがた障がい者芸術作品公募展」受賞作品と今回の「表現に寄り添う空間」を合わせた展示が山形県米沢市に巡回予定です。最新情報は、やまがたアートサポートセンターら・ら・らウェブサイトよりご確認ください。
- 会期:2024年1月7日から14日
- 会場:米沢市民ギャラリーナセBA(米沢市中央1-10-6)