私たちのすぐそばには、もうひとつの別の世界がひそんでいるのかもしれない。
上土橋勇樹(かみつちばし ゆうき)さんと戸谷 誠(とや まこと)さんによる表現はその可能性を期待させてくれます。
上土橋さんは実際には存在しない洋書の表紙、DVDジャケット、映画のエンドロールなどを制作しています。参考とするモチーフもないまま、「あたかもありそうな」というユニークな視点で作られるそれらは、独自の秩序に基づいて増殖していきます。
戸谷さんもまた、自身のなかにあるイメージを追求するアーティストです。一貫して鮮やかな発色で描く戸谷さんは、その色合いに負けないくらいのシュールな世界観を展開し、途方もない年月をかけて複製や加筆修正を繰り返します。
ふたりによる表現は、並行世界=パラレル・ワールドが幾重にも存在していることを感じさせてくれるのではないでしょうか。彼らが永々と歩む世界の在りようをご覧ください。
上土橋勇樹
2001年岐阜県生まれ、滋賀県在住。
3歳ごろから描き始め、様々なフォントに興味を持ち、小学1年生ごろからパソコンを使うようになる。2020年から〈やまなみ工房〉に所属。同施設や自宅で、独自の法則に基づき、カリグラフィーや架空の本のカバー、DVDジャケット、エンドロールなど、多岐にわたる媒体による作品を制作。読解の困難さ、複雑さを体現するその作品には、同時代的な感性が見て取れ、近年注目が集まっている。また、自宅ではフォントのレイアウトや料理を作る過程などを撮影し、毎日ストイックにYouTubeで公開している。
戸谷 誠
1944年東京都生まれ、東京都在住。
20代のころから、女性像や錯視効果を取り入れた作品など、人物、月、風景といった諸要素が複雑に絡み合う作品を描く。どこかシニカルで、少しエロティックなその作品は、幸福感にあふれた楽しい印象も感じさせる。また、戸谷は自身の作品について、「どのような絵になるかは、描いてみないとわからない。」と語る。刹那的に現れる脳内イメージを描き留めることで多くの作品を生み出す一方で、何年もかけてそれらの複製や加筆修正を行い、ひたむきに絵と向き合い続けている。
関連イベント
上土橋勇樹の公開制作&ギャラリートーク
上土橋勇樹さんをお招きして、展示会場で公開制作をしていただき、サポートする方々と作品の謎について語ります。
- 出演者:上土橋勇樹、上土橋真由美、棡葉昌大、横井 悠
- 日時:8月5日(土)13:30から15:30(ギャラリートークは14:00から)
- 会場:NO-MA
- 参加費:観覧料のみ
※既に展覧会をご覧の方はチケットの半券をご提示ください
絵巻物でつむぐパラレルワールド
戸谷 誠さんの制作工程である「透き写し」を体験しながら、みんなの絵をつむいで一枚のオリジナル絵巻物を作るワークショップです。
- 日時、場所:会期中はいつでも展示会場で体験できます。
- 参加費:観覧料のみ