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【画像】書籍の表紙。ベージュの背景に、線画で左手が描かれているシンプルな表紙に黄緑の鮮やかな帯がついている。

(カテゴリー)お知らせ

(ニュースのタイトル)書籍「『LISTEN リッスン』の彼方に」

(更新日)2023年07月18日

(この記事について)

ろう者が音のない「音楽」表現に挑戦したからこそ生まれた、根源的な問い–––音楽とは何か、表現とは何か、身体とは何かを読者に問いかける一冊。

本文

2016年に話題になった、耳の聞こえないろう者たちがそれぞれの「音楽」を奏でるアート・ドキュメンタリー・フィルム『LISTEN リッスン』は無音の映画です。
演技経験のないろう者から演劇経験者、舞踏家まで、さまざまな人が手や指、顔、足、全身をつかった身体表現で生み出す世界は、まさに「舞踊詩」のような「音楽」とでもいうべきもの。ともにろう者である映画監督の牧原依里さんと舞踏家の雫境(だけい)さんが、共同監督として、この作品を生み出しました。

『LISTEN リッスン』の上映会では耳栓が配られます。映像に音はないけれど、周囲の環境音も聞こえない状態、ろう者に近い状態で観てほしいという試みです。それによって、多くの人がこれまでにない体験をしました。そして、感動した人たちが、映画にコメントを寄せています。吉増剛造、ヴィヴィアン佐藤、田口ランディ、大林宣彦、小野寺修二、齋藤徹、佐藤慶子、木村晴美、丸山正樹、松﨑丈、吉田優貴、齋藤陽道、佐々木敦、七里圭、薗部真志、喰始、近藤良平、藤岡みなみ、森公美子、森山開次、綾戸智恵、荒木経惟、伊藤亜紗など。(敬称略)

本書はこの映画『LISTEN リッスン』を書籍の形で示そうというものです。しかし、会話やナレーションのある映画のような台本はありません。そのため、撮影・演出にあたって監督たちが出演者に示したもの、そのコミュニケーションの過程、さらに、その過程で牧原・雫境監督が考えたこと、5年後、そして現在の考えなどが述べられています。特異な映画づくりの過程と、さらにはこの映画が表現するものを言葉で表現しようという、困難な試みに挑んだ一冊です。

ろう者だからこそ、そしてろう者が音のない「音楽」表現に挑戦したからこそ生まれた、根源的な問い–––音楽とは何か、表現とは何か、身体とは何かを読者に問いかけます。


目次

  • はじめに   雫境
  • 第1章 共振への道程  
    • 1 牧原依里編  
    • 2 雫境編
  • 第2章 ふたりの化学反応から  雫境
  • 第3章 撮影と編集のあいだで  雫境
  • 第4章 2016年『LISTEN リッスン』が上映されて    
    • 1 映画『LISTEN リッスン』の上映へ  雫境  
    • 2 映画パンフレットに掲載された文章から  
      • 「ろう者の音楽」の世界へ  木村晴美  
      • 響存  松﨑 丈  
      • 音・響(音は聴くものか?)  齋藤 徹  
      • 振動を超えて内なる宇宙に広がる音楽  松原正樹  
    • 3 アフタートーク・対談ハイライト集、2016年  
      • 横尾友美  
      • 佐沢静枝  
      • 松原正樹  
      • ヴィヴィアン佐藤  
      • 吉田優貴  
      • アツキヨ  
      • 吉増剛造  
      • ササマユウコ  
      • 大橋ひろえ  
      • 田口ランディ  
      • 丸山正樹  
      • ウォン・ウィンツァン  
      • 米内山明宏・佐藤慶子  
      • 門 秀彦  
      • 佐藤譲二  
      • 小野寺修二・横尾友美
  • 第5章 『LISTEN リッスン』から5年後に  
    • 1 響存から5年後   松﨑 丈  
    • 2『LISTEN リッスン』から5年後に  ヴィヴィアン佐藤
    • 3 こころ躍りからだ躍る  吉田優貴  
    • 4 ふれる ふるえる ふれられる  ほんまなほ  
    • 5 問う。  ササマ ユウコ  
    • 6 『LISTEN リッスン』から5年後に  小野寺修二
  • 第6章 手話・定義・文化  雫境
  • 第7章 ろう文化のなかのオンガク  
    • 1 ろう文化のなかのオンガク  雫境  
    • 2 「目で生きる人」のオンガクワークショップ   菊川佳代・砂川巴奈歌
  • 第8章 論考編  
    • 1 ろう者の感覚と音楽  松﨑 丈  
    • 2 「音のない音楽」の論理——翻訳としての『LISTEN リッスン』 土田まどか
  • おわりに 痕跡から未来へ想いをめぐらして  雫境

雫境(だけい)

ろうの舞踏家。1997年、故・鶴山欣也の誘いを受け、舞踏を始める。2000年にユニットグループ「雫」を旗揚げ、国内外で公演とワークショップを行っている。2013年アニエス・トゥルブレ監督の映画『わたしの名前は…』に出演。2016年牧原依里と共同監督として映画『LISTEN リッスン』を製作。他に元藤燁子や小野寺修二の演出作品にも出演。2019年舞踏をベースにした身体表現を模索するためにユニットグループ「濃淡(NOUTAN)」を結成。


関連イベント

『「LISTEN リッスン」の彼方に』出版記念 映画特別上映&トーク
「映画『LISTEN リッスン』が示したもの」ヴィヴィアン佐藤vs雫境vs牧原依里

日程:2023年9月12日(火)19時〜21時
時間:午後7時から9時
会費:1,000円
定員:30名

講 師:ヴィヴィアン佐藤(美術家、文筆家、非建築家)、雫境(舞踏家)、牧原依里(映画作家)
司 会:志賀信夫(編集者、批評家)

申込み:美学校のイベントページ予約フォームよりお申し込みください。
会 場:美学校 本校(東京都千代田区神田神保町2-20 第二富士ビル2F)
イベントのお問い合せ: butohart@gmail.com/09024522116(shiga)


インフォメーション

書籍「『LISTEN リッスン』の彼方に」

編著者:雫境
発行:論創社
発行日:2023年5月19日
ISBN:978-4-8460-2275-4
定価:2000円(税別)
276ページ 四六判 並製

お問い合わせ:論創社