2021年8月、東京パラリンピック開会式。車いすの少女が演じる「片翼の小さな飛行機」の物語で、ド派手な衣装をまとい、ギタリスト布袋寅泰らを乗せたデコトラの運転席に座りパフォーマンスを繰り広げた武藤将胤(むとうまさたね)さん。全ての人が自分らしさを表現し、生き続けられる「BORDERLESSな生き方」を世界へ発信した。
大学を盛り上げるイベントに明け暮れた学生時代。口癖は「クレージーに行こうぜ!」。社会を明るくするアイデアを形にしたい、その夢を叶えるため大手広告代理店に就職。広告プランナーとなり順風満帆の人生が続くと思っていた。妻・木綿子(ゆうこ)さんと初めて会った日、手の震えが始まっていた。27歳の時、全身の筋肉が徐々に動かせなくなる不治の難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断。「俺の人生は終わるのか—」絶望しかけたその時浮かんだのは、患者たちの未来を明るくするアイデアを形にする事。病気の啓発と、最新テクノロジーを使った活動を開始した。
木綿子さんに支えられながら数々の困難を乗り越え、病気の啓発やアパレル、そして仲間とともに「目」で音楽と映像を同時に操るシステム開発や「脳波」で意志を伝える研究など最新テクノロジーを使った活動に挑戦。不足する介護人材の育成にも力を入れる。さらに病気が進んで声を失ってもAIによる合成音声や「目」でコミュニケーションが取れる装置を駆使して、その活動は限界を超えて加速していく。誰もが自由に表現し、生きることができる社会を目指して。そして、難病ALSが治せる日が来ると信じて…
武藤将胤さんについて
1986年 アメリカ・ロサンゼルス生まれ、東京育ち。
大学卒業後、博報堂/博報堂DYメディアパートナーズで、様々なクライアントのコミュニケーション・マーケティングプラン立案や新規事業開発に従事。
27歳で難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断されたことをキッカケに一般社団法人WITH ALSを設立。
現在は、クリエイティブの力で「ALSの課題解決を起点に、全ての人が自分らしく挑戦できるBORDERLESSな社会を創造する。」ことをミッションに、エンターテインメント、テクノロジー、介護の3領域で課題解決に取り組んでいる。クリエイターとして、2021年東京パラリンピック開会式や2022年CANNES LIONSなど国際的イベントにも多数出演。
自身のアパレルブランドでは、視線入力によるデザインを担当。楽曲の作詞作曲も手掛け、EYE VDJ MASAとして、様々なアーティストとコラボレーション楽曲を制作。2021年に『EVERYONE,CHALLENGER』、そして2022年にリリースした『FLY』は、今作の主題歌となった。
ALS(Amyotrophic Lateral Sclerosis・筋萎縮性側索硬化症)について
手足やのど、舌などの筋肉が痩せて徐々に弱くなっていき、意識や感覚は保たれたまま、全身が動かせなくなる進行性の難病です。筋肉の病気ではなく、筋肉を動かす脳や脊髄にある運動神経細胞(運動ニューロン)が障害を受けることで発症します。
一般的に病状の進行は早く、延命治療となる人工呼吸器を使用しなければ、個人差はありますが、発症から平均3~5年で呼吸困難に陥り、死に至ることが多いと言われています。日本での患者数は、約1万人で、性別ではやや男性が多い傾向にあり、特に60~70歳代に多く、稀に若い世代での発症もあります。
ALSの大部分は遺伝とは関係なく、原因が不明の「孤発性」と呼ばれます。全体の5~10%が「家族性」で近年続々と原因遺伝子が明らかとなっていますが、発症のメカニズムはまだ十分に解明されていません。
進行を遅らせる既存薬はありますが、まだ根本的な治療法はなく、その開発が急がれています。
公開情報
6月23日(金)より、T・ジョイPRINCE品川、T・ジョイ梅田にて先行公開