恋人とのデートがきっかけで初めて美術館を訪れた全盲の白鳥建二さん。その日、作品を前に語られる言葉を聞きながら「全盲でもアートを見ることはできるのかもしれない」と思うようになった。そして自らあちこちの美術館の門を叩いた白鳥さんは、いつの間にか「自由な会話を使ったアート鑑賞」という独自の鑑賞法を編み出した。それは、期せずして、目の見えるひとにとっても驚きと戸惑い、そして喜びを伴う体験であった。
言葉は「見える」と「見えない」の隙間を埋められるのか?
水戸から東京、新潟、そして福島へ。アート作品をめぐりながら、白鳥さんは渡り鳥のように旅をしていく。カメラは、その旅路や見えない日常を追いかける。そして、白鳥さん自身もデジタルカメラを手に持ち新たなチャレンジへ。すると何かが少しずつ変わっていって……。答えのない問いを胸に抱えながら、分断の時代を生きるわたしたち。アートの力とはなにか。障害とは何か。見えないからこそ見えてくるものはあるのか。異なる背景の人々が一緒に作品を見て、語りあう、その意味とは-。
「見える」「見えない」、障害と健常、アーティストと鑑賞者といった「線」を超えようとする人々。他の誰にもなれない孤独な存在同士が織りなす静かな波を映し出す。
出演
白鳥建二
全盲の美術鑑賞者
20年以上前から美術館に通いはじめ、年に数十回は美術館に通う「美術館好き」。さまざまな美術館で鑑賞ワークショップなどのナビゲーターを務める。一人で歩くときはデジタルカメラで撮影するのが習慣。酔っぱらって調子に乗ると、やたらと撮りまくる傾向にあり、撮影した枚数は40万枚。シャッターボタンを押した時点でほぼ完結し、その後のことについてはあまり興味がない。
共同監督
三好大輔
映画監督/プロデューサー。1972年岐阜生まれ。1995年 日本大学芸術学部卒。音楽専門の制作会社入社。MVやライブ映像の制作に携わる。2000年PROMAX&BDA AWARDS受賞。広告会社を経て2005年独立。癌を患った友人の奥山貴宏を追った記録がNHKのETV特集「オレを覚えていてほしい」で評判となる。2008年より東京藝術大学デザイン科講師。市井の人々が記録した8mmフィルムによる「地域映画」づくりをはじめ、全国にその活動を広げる。東日本大震災後、安曇野に移住。2015年 株式会社アルプスピクチャーズ設立。2020年 松本の古民家に拠点を移す。全盲の美術鑑賞者白鳥建二のドキュメンタリー「白い鳥」共同監督。映画を中心に映像制作を行う一方、全国の大学等で映像の指導を行う。
川内有緒
映画監督を目指して日本大学芸術学部へ進学したものの、いつしか中南米のカルチャーに魅せられ、米国ジョージタウン大学の中南米地域研究学で修士号を取得。米国企業、日本のシンクタンク、仏のユネスコ本部などに勤務し、国際協力分野で12年間働く。2010年以降は東京を拠点に評伝、旅行記、エッセイなどの執筆を行う。
『バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌』(幻冬舎)で新田次郎文学賞、『空をゆく巨人』(集英社)で第16回開高健ノンフィクション賞を受賞。最新刊の『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』(集英社インターナショナル)でYahoo!本屋大賞ノンフィクション本大賞。ドキュメンタリー映画『白い鳥』共同監督。趣味は美術鑑賞とDIY小屋づくり。また東京でギャラリー「山小屋」(東京)を運営している。
劇場情報
全国順次公開中。シネコヤ(神奈川)、シネマネコ(東京)、K B Cシネマ(福岡)、日田シネマテーク・リベルテ(大分)、ほとり座(富山)、フォーラム福島(福島)、フォーラム山形(山形)、フォーラム仙台(宮城)にて近日上映予定。
最新の上映館、舞台挨拶・トークイベント等の情報は、映画『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』公式サイトよりご覧ください。
本映画の上映は「UDCast」方式によるバリアフリー音声ガイド・日本語字幕に対応しています。
バリアフリー版上映のプログラムも組んでおりますので、詳細は各劇場にご確認ください。