金沢21世紀美術館で、2022年10月1日より福祉実験ユニットの「ヘラルボニー」の新プロジェクト「ROTINE RECORDS(ルーティンレコーズ)」が紹介されています。「ヘラルボニー」は、創設者である松田崇弥・文登の自閉症の兄・翔太が7歳の頃に自由帳へ記した謎の言葉を社名に活動しており、そこには「一見意味がないと思われるものを世の中に新しい価値として創出したい」という意味が込められています。
「ROUTINE RECORDS」
「lab.5 ROUTINE RECORDS」展では、金沢市内の特別支援学校や福祉施設、他県の福祉施設に通う知的障害のある人が習慣的に繰り返す、日常の行動(ルーティン)から生まれる音が丁寧に紡がれ、音楽として届けられます。
会場では、個々の音の視聴コーナーや、各地で集められたルーティン音からプロの音楽家が創作した楽曲を展示しています。また、鑑賞者がルーティンによって生まれた音をリミックスし、新しい音楽を制作できるDJブースなどが設けられています。
展覧会を通じて私たちは、多様な背景を持つ他者への理解を深め、気づきを得ることができます。
プロジェクト・ステイトメント
「ん~」「さんね」「な~い」「し~んかんせ~ん」。4歳上、重度の知的障害を伴う自閉症の兄・翔太は今日も、謎の言葉を延々と唱え続けている。響き自体が心地いいのだろうか、意味や意図はあるのだろうか。ふとすると自宅で聞こえてくる謎で愛おしい環境音は、外出先では奇異の目に晒(さら)される音に変貌を遂げる。これは兄だけに限った言動ではない。知的障害のある人の、自閉症のある人の、不思議な行動特性でもあるのだ。不思議で愛おしく謎に満ちた彼等の繰り返す言葉の数々が、「金沢21世紀美術館」を舞台に音楽へと昇華されていく。あのとき、学校で見た、電車で見た、あの風景や音を想像して欲しい。知的障害のある人のルーティンがつくりだす、新しい音楽「ROUTINE RECORDS」は、実験的音楽を耳で感じながら、あなたの心の記憶を“繰り返し”再生させるプロジェクトである。
株式会社ヘラルボニー
代表取締役 松田崇弥 松田文登
音を知り、体験できる展示
知的障害のある人々の日常から生まれる様々な音や環境について、鑑賞者は会場を1周しながら、制作された音楽やその創作プロセスの体験も含め、多角的に知ることができます。また、特設WEBサイトでも、ルーティンから生まれた音の紹介などを通じ、プロジェクトの一端を公開しています。
展示を構成する3つの要素
- 音の生まれる背景について「繰り返し行動(=ルーティン)」をもつ知的障害のある人々による、日常で生まれた様々なルーティンについて、「音」や「言葉」 として聞くことができるコーナーがあります。
-
ルーティン音から生まれた音楽や映像の視聴ブース。例えば紙をちぎったり、言葉遊びをしたりというルーティン音から生まれた、プロの音楽家による楽曲を視聴できるブースがあります。
-
体験ブースについて 会場中央に設置されたブースでは、音楽を構成するルーティン音が生まれた背景やその特徴、制作された音楽の視聴体験を通じ、鑑賞者自身が様々なルーティン音を組み合わせ、自由に作曲できる創作体験ができます。
協力福祉施設・特別支援学校・個人
・地域支援センターポレポレ(石川県金沢市)
・金沢大学附属特別支援学校(石川県金沢市)
・京都市ふしみ学園アトリエやっほぅ!!(京都府伏見区)
・やまなみ工房(滋賀県甲賀市)
・さふらん生活園(愛知県名古屋市)
・松田翔太(岩手県金ヶ崎町)