国立民族学博物館にて、特別展「Homō loquēns『しゃべるヒト』――ことばの不思議を科学する」が2022年9月1日(木)から11月23日(水・祝)まで開催されます。
身近にありすぎてほとんど振り返ることのない「コトバ」をテーマに、言語学のみならず、文化人類学、工学系、教育系、脳科学、認知心理学等の50名を超える国内外の研究者が協力して、その不思議に迫ります。
さらに展示の一部として、映像作家の山城大督がことばをイメージした作品を公開します。
展示の見どころ
ことばについての展示というと、「世界にはたくさんの言語がある」という、外国語の話だと思われるかもしれませんが、本展では、コトバの伝達や習得のしくみ、ヒトとコトバの関係が紹介されます。
来館者にコトバについての新しい「気づき」を提供するため、次のような角度からコトバを紹介しています。
■とりあげるのは、手話言語と音声言語
本展では、「手話言語」と「音声言語」という二種類の人間の言語をとりあげます。視覚や聴覚という伝達方法の違いはありますが、どちらも人間の認知能力に立脚した言語としての構造をもっています。
「なぜ手話が言語なのか」ということや「そもそも言語とはなにか」ということが、「コトバが伝わるしくみ」、「コトバを発する身体のしくみ」、「コトバを身につけるしくみ」をとおして紹介されます。
■解説言語に日本手話
本展では、音声言語である日本語や英語とあわせて、手話言語である「日本手話」で展示場内の解説がされます。「日本手話」が第一言語の方への情報提供手段となることはもちろん、手話が地域によって異なる表現を使用する言語であることを知らない方へは、手話の多様性を知っていただくきっかけとなるかもしれません。
■言語研究の多様性
みんぱくの言語研究は、「言語学」を専門とする研究者がおこなっていますが、実は言語に関する研究は、医学、工学、教育学など、多様な分野でおこなわれています。例えば、喉から声が出る仕組みは工学系の研究、子どもが言語を習得する過程は認知科学、外国語を学習する方法は教育学、もちろん身体を使うので医学…。 国内外の50名を超える研究者の協力のもと、これらそれぞれの分野における、最新の言語に関する研究や開発の成果が紹介されます。
■言語の多様性――私の言語ヒストリー
展示の後半では、「私の言語ヒストリー」という動画が展示されています。ここでは、社会でさまざまな形で言語とつきあいながら活躍する20 名の方々の言語ヒストリーを紹介します。
人と言語のかかわり方は多様で、また、ライフイベントによって変化することもあります。言語に関わる脳・身体機能上の疾病や障害は身近に存在しています。言語使用が思うようにならない場合でも、補助ツールなどにより、コミュニケーションが可能です。言語のかたちに関わらず、すべての人が社会の一員であること、また、社会で活躍し得ることについて示します。
■言語を体験的に理解するプログラム
本展の会期中に、さまざまな関連イベントが予定されています。講義形式のイベントや、体験型のワークショップをとおして、さまざまなコトバについて、より深く理解することができるプログラムです。
みんぱくウィークエンド・サロンでは、土佐信道氏プロデュースによる、中小電機メーカーに「擬態」した芸術ユニットである明和電機も登場します。
詳しいイベント情報は下記からご覧いただけます。
「Homō loquēns 『しゃべるヒト』 ―ことばの不思議を科学する」イベント情報
解説言語
日本語、日本手話、英語