「劇を作る」ということは、虚構を観客と共に立ち上げること。演者(作り手)と鑑賞者の双方を癒す芸術とも言えます。しかし、子どもや老人、幼い子どもの保護者、病気や障害のある人など、社会的弱者が創作はおろか観客にも含まれていない現状があります。そして、私たちは自分たちが無視していることに気がついていない。
本作では、それがどういうことなのかを、実際に障害のある方々との創作を通じてコミカルに描写します。
これまで童話や事件などの物語の枠組みを借りながらも自伝的作品を作り続けてきたトリコ・Aの山口茜が、「障害のある人」を取材し、新しい物語を創作して発表することで、これまでの創作の殻を破ります。2019年から3年をかけて丁寧に創作を行う過程で、障害者を取り巻く創作環境と健常者の意識の改善を目指し、それが作品の深化に繋がり、観客に届くことを目標としています。
トリコ・A
山口茜が手掛ける劇作および演出作品の上演を目的に、公演の都度、出演者・スタッフを集めて活動する。東京国際芸術祭リージョナルシアターシリーズ、精華小劇場オープニングイベント、大阪芸術創造館クラシックルネサンス、愛知県芸術劇場演劇祭、アトリエ劇研演劇祭、文化庁芸術祭などに参加。近年はアクセシビリティサービスとして、無料の託児サービス、聴覚障害の方のための字幕サービスなどを実施。今後、音声ガイド等取り扱うサービスを広げていきたいと考えている。
あらすじ
「私らはみんな、意味も使い道もない、ただのへそ。」
脳性麻痺を患う主人公は、小さな町にある小さな寺で、両親と暮らしている。彼女の定位置は大きな松の木のある庭に面した縁側。ある時は父の読むお経とともに、ある時は縫い物をする母とともに、彼女の毎日は過ぎていた。ある日、父が倒れ、彼女のもとへ初めてヘルパーがやってくる。ところが主人公は、ヘルパーとどう接して良いのかわからない。彼女は悩む。私はヘルパーに、何をしてほしいのか。そもそも私はいったい、何を望んでいるのか。
誰も知らない、でもみんなが知っている、脳性麻痺の、ひとの生活。
アフタートーク
各公演の上映終了後にアフタートークが開催されます。
<大阪公演>
- 8月7日(土)13:30公演上演終了後
出演:伊藤拓也(演出家)、山口茜 - 8月8日(日)13:30公演上演終了後
出演:森田かずよ(ダンサー・俳優)、はしぐちしん(俳優・劇作家・コンブリ団代表)、山口茜
<東京公演>
- 9月5日(日)13:30公演上演終了後
出演:ウォルフィ―佐野、山口茜