国内外のアール・ブリュットの動向において、長く活躍を続ける作家と、近年発表の場を広げつつある作家を、さまざまな角度から紹介する展覧会シリーズ「アール・ブリュット ゼン&ナウ」の第1回「レターズ ゆいほどける文字たち」が、東京都渋谷公園通りギャラリーで開催されます。
音や意味、形などへの興味から始まる、それぞれの作家の文字への執着が一つ一つの作品として表現されています。作家の手の跡が色濃く残る文字は、画面上で重ねられる中で、音や意味から解き放たれて、ただの線や点になります。しかし、すぐにまた、手放したそれらをまとって文字へと戻っていきます。
【出展作家】
喜舎場盛也(1979–)
沖縄県生まれ。1990 年代から自宅で制作、その後 2002 年頃から浦添市にある「わかたけアート」でも制作を行う。既成の図鑑やカタログの仮名を漢字やローマ字などに変換し、余白を文字で埋めていく。出展歴として、「ジャポン」(アール・ブリュット・コレクション、ローザンヌ、2008–09 年)のほか、国内外で多数。
佐久田祐一 (1987–)
沖縄県生まれ。2004 年頃から自宅で精力的に制作を行う。記憶のなかの言葉や情景を切り文字にして組み合わせ、画用紙いっぱいに貼り重ねる。「アール・ブリュット・ジャポネ」(アル・サン・ピエール、パリ、 2010-11 年)をはじめとして、国内外で出展多数。
ハラルト・シュトファース(1961–)
ドイツ、ハンブルク生まれ。2001 年より同市の職業施設に附属の「アテリエ・デル・ヴィラ」にて制作を行う。1999 年に同居する母親宛の手紙を記して以来、「Liebe Mutti(親愛なるお母さん)」で始まる手紙を独自の罫線と文字で書き続ける。小さな紙片だった手紙は、年々巨大化している。作品は、ローザンヌのアール・ブリュット・コレクションなどに収蔵。
新城千奈(1990–)
沖縄県生まれ。幼い頃の数字への強い執着から始まり、その後、関心は文字へと広がる。線や長細い円などを組み合わせた文字が連なって一つの形をつくり、時には画面を埋め尽くす。主な展示に、「アートキャンプ 2017 素朴の大砲」展(沖縄県立博物館・美術館県民ギャラリー、2017 年)などがある。
富塚純光(1958–)
兵庫県生まれ。1993 年頃から西宮市の「すずかけ絵画クラブ」にて制作を行う。新聞紙や和紙に、自らの記憶と創作を交えた物語や、挿画を描く。単色で描いた線の間を埋めるかたちで文字を挿れ、淡く鮮やかなパステルで色彩を点描する。作品は、ローザンヌのアール・ブリュット・コレクションなどに収蔵。
西川匠 (1986–)
神奈川県生まれ。横浜市で活動する「アトリエ・パンパキ」に、2000 年頃から参加。石けん水に水彩絵具を溶かす独自の技法で、建築物やスイーツなどを描き、説明書きを丹念に書き記す。主な展示に、「ポコラート全国公募展 vol. 9 」(アーツ千代田 3331、東京、2020年)などがある。
西山友浩 (1974–)
広島県生まれ。福山市の「あゆみ苑成人寮」で暮らす。縦横、斜めに引いた線を重ね合わせて、文様のような文字を書く。自ら編み出したこの手法により、日々の出来事を日記に綴っていた。主な出展歴に「ポコラート宣言 2014」(アーツ千代田3331、東京、2014 年)など。
松本国三(1962–)
大阪府生まれ。通天閣近くの家業の中華料理店を手伝う傍ら、1988 年頃より文字を書くことが日課となる。 1995 年より大阪市の「アトリエひこ」に参加。歌舞伎や茶道、アイドルなど関心を持つジャンルにまつわる文字を選び、身近な紙に書き写す。作品は、ローザンヌのアール・ブリュット・コレクションなどに収蔵。
【関連イベント】
学芸員によるギャラリートーク
- 開催日:2021年5月5日 (水) 、5月29日 (土) 14:00-
- 会場:東京都渋谷公園通りギャラリー 展示室1、2
- 入場無料
- 定員:各回5名(事前申し込み不要、先着順)
アーティストトーク(オンライン配信)、トークイベント「文字をほどく」(オンライン配信)についての詳細はこちらをご覧ください。