本展は、独自の手法で創作を続けてきた岡田美佳、澤田隆司、清水政直、似里力、蛇目の5名の作家と、ひとりの写真家・齋藤陽道が出会い、昨年から今年にかけて、5名の作り手たちの日常空間に赴き、撮影して紹介する展覧会です。
本展では、5名の作り手たちの作品〈ワーク〉とともに、今回齋藤陽道が出会い、写した、作り手たちの生活や創作の現場〈フィールド〉が展示されています。この両者を行き来していただくことで、作品鑑賞の場でありながら、作品鑑賞を媒介として、新たな他者との出会いへとイマジネーションの翼をひろげます。
「その場所に行き、出会い、知る」といったフィールドワークならではのアクティブな世界との関わり方をヒントとして、作品と作品の背後を捉えなおし、人の創造活動のはじまりを考えようという試みです。
【出展作家】
齋藤陽道(1983-)
東京都生まれ。写真家。都立石神井ろう学校卒業。なにげない日常や多様な背景をもつ人々など、さまざまな対象を真っ直ぐな視線で捉え、穏やかな光とともに写す。2010年、第33回キャノン写真新世紀優秀賞受賞。2014年、日本写真協会新人賞。2019年、写真集『感動、』を刊行。
岡田美佳(1969-)
東京都生まれ。糸、布、ビーズ、絵の具など独自の素材と刺繍技法で作品を制作。1992年から個展を各地で開催。食卓や風景を描き、雑誌『暮らしの手帖』や新聞などに掲載される。ポコラート全国公募展2011オーディエンス賞受賞。
澤田隆司(1946-2013)
兵庫県神戸市の片山工房にて、2003年から10年間スタッフとの協働による絵画の制作を行う。自力で動かせる右足首のスナップを使い、絵の具の入った紙コップやペンキの缶を蹴って描いた。2011年、「共生の芸術祭」出展。
清水政直(1936-)
東京都生まれ。幼少期に失明。青年期より点字図書を通じ文学に親しむ。1990年代より、美術家・西村陽平を講師とする土粘土を使った造形ワークショップに参加。2019年、「トットARTSフェス2019+わ!しながわ」展出展。
似里 力(1968-)
岩手県生まれ。岩手県花巻市のるんびにい美術館に併設する「アトリエまゆ~ら」で活動。糸を細かく切って結びなおし玉状に巻いていくユニークな手仕事を日課とする。2009年、岩手県芸術祭現代美術部門で優秀賞受賞。
蛇目(1982-)
兵庫県生まれ。画家。高校中退後、独学で絵画の研究を始める。近年、アクリル絵の具を何層にも塗り固め彫刻刀で削り出す技法で制作を続ける。2018年、ローザンヌのアール・ブリュット・コレクションによる「日本のアール・ブリュット もうひとつの眼差し」展出展。