普段の生活で目に止められることのない、路上生活者。彼らは何を思い、生きているのか。
ドキュメンタリー映画「ダンシングホームレス」の主人公「新人Hソケリッサ!」は、路上生活者や路上生活経験者だけで構成されたダンスグループです。彼らは実名で登場し、その日常が包み隠さず描かれます。メンバーは家庭内暴力や病気、社会的な挫折を味わい、疎外感に苛まれながらホームレスになりました。グループの主宰者で振付師のアオキ裕キは、あらゆるものを捨ててきたからこそ、唯一残された「原始的な身体」から人間本来の生命力溢れる踊りが生み出されるのだと言います。
東京オリンピック直前のいま、強制的な追い出しや排除アートで居場所を失うホームレスの人権問題がクローズアップされている一方で、五輪開催都市で音楽やアートを通してホームレスと社会をつなぐ世界的な団体が、東京でも準備を始めています。
本映画の監督、三浦渉が自らカメラを持って1年以上にかけて密着したソケリッサの“生きる舞”は、排除の理論が広がるいまの日本社会に痛烈なメッセージを与えます。
【あらすじ】
新宿のバスターミナルで路上生活をする西 篤近(40)。ダンスで生計を立てたいと願うが、人間関係や借金に疲れ、ホームレス生活を始める。一度は野垂れ死ぬことも考えた西が出会ったのが、「新人Hソケリッサ!」だった。
主宰者のアオキ裕キ(50)はダンス留学したアメリカで同時多発テロに遭遇した衝撃から、帰国後にソケリッサを立ち上げる。社会からも妻からも逃げた小磯松美(70)。メニエール病を患いドロップアウトした横内真人(56)。父親の暴力から逃れ路上生活者となった平川収一郎(49)。
アオキはそんな全てを捨ててきた人たちから生まれる「肉体表現」を追求しようとする。彼らを応援してくれる人もいるが、時として「わかりにくい」「踊れるなら働け」と罵倒されることもあり、苦悩する。しかし、アオキは不器用にしか生きられないホームレスたちのそのままを受け入れる。
彼らも踊りを通して、もう一度生きる喜びを取り戻していった…。