技術は元来、人の想いに力を与えてくれるものです。インターネットや3Dプリンターなどが普及していくなかで、人の暮らし、仕事、気づかい(ケア)、コミュニティにとってデジタル技術をどのように活かしたいかは私たちが問われています。経済と福祉と自然のバランスをとりながら道具や事業を生みだし、継続するための仕組みをつくることが求められている今、これらに対する俯瞰的な考えと具体的な事例をもとに討論します。
特別講演① 3Dプリントで多様化するQOL -イスラエルIKEAとの実践 -
イスラエルにあるNGO「Milbat」は、身体機能に困難がある人たちの技術環境を整え、自立して生活できるよう支援活動を続けています。2019年からイスラエルIKEAと共同し、障害のある人が家具を使いやすくする「ThisAbles」プロジェクトを開始。製品開発したデザイナーから、実現までのプロセス、そしてこれからについて学びます。
*QOL=クオリティ・オブ・ライフ
スピーカー:Mariana Bendavit/マリアーナ・ベンダビット(NGO Milbatインダストリアルデザイナー)
医療機器とその補助機器に特化したインダストリアルデザイナー。イスラエルのNGO ”Milbat”で製品をデザインし、イスラエルIKEAと共同で、障害のある人が家具を使いやすくするプロジェクト「ThisAbles」を立ち上げる。
パネリスト:小林 茂(情報科学芸術大学院大学[IAMAS] 教授)
1993年より電子楽器メーカーに勤務し、2004年からIAMAS。Arduino Fioなどツールキットの開発に加えて、オープンソースハードウェアやデジタルファブリケーションの活用を広める。イノベーションマネジメントを専門とし、多様なスキル、視点、経験を持つ人々が協働でイノベーションを創出する手法を探求。スタートアップを支援するための「Startup Factory構築事業(経済産業省)」検討会の座長や、高校生らがテクノロジーを活用したものづくりを学ぶワークショップ「岐阜クリエーション工房」を担う。
特別講演② ウェルビーイングを実現するテクノロジーのデザイン
「幸福度」「良い状態」「善き生」を意味する「Well-being」。一人ひとり価値観が異なるウェルビーイングを実現するために、さまざまな考えや方法が世界各国で研究・実践されています。ウェルビーイングをデザインすることの専門家から、IoTやAIといったテクノロジーができることを学び、暮らしと技術のありようを再考します。
スピーカー:Céline Mougenot/セリーヌ・ムージュノ(インペリアル・カレッジ・ロンドン准教授)
インペリアル・カレッジ・ロンドンのダイソン・スクール・オブ・デザイン・エンジニアリング校で准教授。「Design Cognition(デザインにおける認知)」と「共同デザイン」を専門とし、多様な人たちによるコラボレーションとイノベーションの関係性を研究している。
パネリスト:渡邊淳司(ルビ:わたなべじゅんじ)(NTTコミュニケーション科学基礎研究所 上席特別研究員)
東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了(2005年)。博士(情報理工学)。2011年よりNTTコミュニケーション科学基礎研究所勤務、2019年4月より同人間情報研究部上席特別研究員。人間の知覚特性を利用したインタフェース技術を開発、展示するなかで,人間の感覚と環境との関係性を理論と応用の両面から研究している。主著に『情報を生み出す触覚の知性』(2014年、化学同人)、『ウェルビーイングの設計論』 (監訳、2017年、BNN新社)、『情報環世界』(共著、2019年、NTT出版)。