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(カテゴリー)展覧会

(ニュースのタイトル)茅ヶ崎市美術館(神奈川・茅ヶ崎市)で展覧会「美術館まで(から)つづく道」

(更新日)2019年07月31日

(この記事について)

“インクルーシブデザイン”の手法を活用したフィールドワークを表現へ

本文

 茅ヶ崎美術館周辺は、昔からの細い道が入り組んでいるため、「道に迷いやすい」と言われることがありました。しかし、茅ヶ崎美術館が参加するMULPA(マルパ)(注1)というプロジェクトにおいて、ある弱視の方が、この複雑な美術館までの道のりをむしろ迷路のように楽しんだと言ったことから新しい試みをスタートさせました。道が複雑で分かりにくいという要素を、異なる認識、価値観から捉えることができないだろうか?そのヒントを探るべく、障害者やマイノリティと位置づけられることの多い人たちと取り組むインクルーシブデザイン(注2)の手法を用いたフィールドワークを、2018年から2019年にかけて行いました。
 この展覧会では、フィールドワークに参加した表現者が、実際に茅ヶ崎を歩いた体験をもとに創作し、視覚、聴覚、触覚、嗅覚などあらゆる感覚を用いて鑑賞する新たな作品を展開しています。また、茅ヶ崎美術館所蔵品の中から萬鐵五郎小山敬三らによる茅ヶ崎を描いた作品も展示し、異なる時代を生きた表現者のイメージが交錯する場としています。本展を通して、障害者やマイノリティをめぐる「助ける側」「助けられる側」という二者の関係性に揺さぶりをかけるとともに、障害の有無を超え、誰もが一人一人異なる感覚を持ちながら生きる「感覚特性者」であるという観点から、違いを認め合い、ともに歩むことを楽しみその価値を捉え直す機会となるでしょう。

注1)MULPA
公益財団法人かながわ国際交流財団の呼びかけにより、2016年より立ち上がったプラットフォーム型のアートプロジェクト。多様な人々・団体とつながりながら、定住外国人や障害のある方々の美術館へのアクセシビリティーを高めることが意識されている。 http://www.kifjp.org/mulpa/

注2)インクルーシブデザイン
高齢者、障害者、外国人など、多様な人々を新しい物事を創り出すプロセスの最初から巻き込むことで、従来の思い込みを打ち破り、新たな発想力を引き出す手段として近年注目されているデザイン手法。


4組のアーティストが新作を発表

茅ヶ崎市美術館を拠点に2018年から1年半にわたり行ってきた、インクルーシブデザインの手法を用いたフィールドワークをもとに、4組の若手アーティストが作品を制作。

【fieldwork 01:聴覚特性者と歩く道】
金箱淳一 + 原田智弘《音鈴》
聴覚障害がある方と茅ヶ崎の道を歩き、ランチのお店を探しました。

《音鈴》 金箱淳一+原田智弘  撮影:MATHRAX

金箱淳一メディアアーティスト/神戸芸術工科大学助教)
1984年長野県北佐久郡浅科村(現:佐久市)生まれの楽器インタフェース研究者/ Haptic Designer。博士(感性科学)。情報科学芸術大学院大学(IAMAS)修了後、玩具会社の企画、女子美術大学助手、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科研究員、産業技術大学院大学創造技術専攻助教を経て神戸芸術工科大学助教、現在に至る。障害の有無にかかわらず、共に音楽を楽しむためのインタフェース「共遊楽器(造語)」を研究。

原田智弘音空間デザイナー/ソラソレ堂)
アナログシンセサイザーとともに育ち、作編曲家、音楽プロデューサーと多彩なキャリアを持つ。電子音楽、アコースティック音楽、環境音楽、ソフトウェア楽器開発までカテゴリーに囚われないサウンドクリエーションを行っている。2001年にSonica Inc.を設立、ソフトウェア音源の国内トップメーカーとして進化し続けつつ、2013年音空間のデザインを使命としたソラソレ堂を設立。商業施設・公共空間のサウンドデザインの他、ユニバーサルサウンドデザインの提唱・開発を進めるなど社会へ向けた音楽というテーマのもとに精力的に活動中

【fieldwork 02:小さな子と歩く道】
原良介《土手の上で》
小さな子どもと、ベビーカーユーザーのお母さんと、茅ヶ崎の道を歩きました。

《土手の上で》 原良介

原良介 画家)
1975年神奈川県生まれ。2000年多摩美術大学美術学部絵画学科卒業、2002年多摩美術大学大学院美術研究科修了。近年開催した主な個展に「project N 36 原良介」東京オペラシティアートギャラリー(2009)、「原良介絵画への小径」茅ヶ崎市美術館(2012)、「天然」ゲルオルタナ(2014)、「色相の上」円覚寺 龍隠庵(2017)など。「トーキョーワンダーウォール公募2001」大賞受賞。また近年は美術館や学校、企業におけるワークショップの開催も多数。2013-2017年多摩美術大学美術学部絵画学科非常勤講師を務める。

【fieldwork 03:盲導犬ユーザーと歩く道】
稲場香織《道の香りパレット》
視覚障害がある方と盲導犬と、美術館から海までの道を歩きました。

《道の香りパレット》 稲場香織  撮影:香川賢志

稲場香織 資生堂グローバルイノベーションセンター 香料開発グループ研究員)
2008年より香料会社ジュニアパヒューマーを経て、大手香料会社エバリュエーターとして、香りの評価・開発、大手メーカー等への香料の提案、プロジェクトマネジメントに従事。2015年南仏グラースにあるGIPGrasse Institute of Perfumery)に入学。在学中MIPMusée International de la Parfumerie)によるPrix de l’Odeur 2015受賞。帰国後、20165月より現職。

【fieldwork 03:盲導犬ユーザーと歩く道】
MATHRAX〔久世祥三+坂本茉里子〕《うつしおみ》
香料開発:稲場香織
視覚障害がある方と盲導犬と、美術館から海までの道を歩きました。

《うつしおみ》 MATHRAX〔久世祥三+坂本茉里子〕(香料開発:稲場香織)  撮影:MATHRAX

MATHRAX久世祥三坂本茉里子〕 
(アーティスト、エンジニア、デザイナー)
電気、光、音、香りなどを用いたオブジェやインスタレーションの制作を行う、久世祥三と坂本茉里子によるアートユニット。なでるとオルゴールのような音を奏でる動物の木彫作品や、水面に映る光を題材にしたLEDの照明作品などを発表。デジタルデータと人間の知覚との間に生まれる様々な知覚や感覚を題材に、人が他者と新たなコミュニケーションを創り出していくしくみを取り入れた作品制作を行う。六甲ミーツ・アート大賞2013 準グランプリ受賞、IPCはんだ付けコンテスト2013 優勝、KONICA MINOLTAエコ&アートアワード2010 グランプリ受賞、電子工作コンテスト2010 グランプリ受賞。

【fieldwork 04:車椅子ユーザーと歩く道】
アーサー・ファン《茅ヶ崎散歩記憶と記憶細胞》
電動車椅子ユーザーの方と、美術館から海までの道を歩きました。

《茅ヶ崎散歩記憶細胞》 アーサー・ファン  撮影:MATHRAX

アーサー・ファン(美術家/理化学研究所脳神経科学研究センター研究員)
2001年ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(米国ロードアイランド州)にて絵画・版画専攻, 美術修士号取得。2009年に来日し、理化学研究所脳科学総合研究センター研究員として東京に在住、活動中。日本とアメリカでの主な作品出展に、中之条ビエンナーレ2017(沢渡温泉)、 ギャラリーカメリア(東京・銀座)、ジルダールギャラリー(名古屋)、hasu no hana(東京・鵜の木)、HAGISO (東京・谷中)、SICF15(東京・表参道)、2013瀬戸内国際芸術祭など。


作品制作協力者:
西岡克浩美術と手話プロジェクト代表、聴覚障害)
そよ、原美帆2 歳の子どもとベビーカーユーザーの母親)
小倉慶子盲導犬ユーザー、視覚障害)
リルハ(盲導犬)
和久井真糸エーラスダンロス症候群患者会、車椅子ユーザー)

特別出品者:蜂飼耳詩人・作家)

インクルーシブデザイン・ファシリテーター:鎌倉丘星視覚障害、呼吸不全、車椅子ユーザー)

フィールドワーク協力者:和田みさ(美術と手話プロジェクト/手話通訳)、市川節子(美術と手話プロジェクト/手話通訳)、町田倫子(NPO法人日本視覚障害者セーリング協会)、安原理恵(会社員/特性:視覚)、平尾菜美(表現者)、香川賢志(写真家)、金 明哲(映像撮影)、湘南工科大学


【関連イベント】
①アーティストトーク
アーティストが自身の作品について解説します。 ※手話通訳を必要とされる方は要連絡。
日時:
2019728日(日)13:0014:00 アーサー・ファン <終了しました>
2019年811日(日)10:3011:30 金箱淳一+原田智弘
2019824日(土)14:0015:00 原良介
2019825日(日)10:3011:30 稲場香織+MATHRAX〔久世祥三+坂本茉里子〕
会場:展示室
料金:無料(要観覧券/事前申込不要)

②フィールドツアー  「作品の道を歩く」 <終了しました>
作品の原点となったフィールドワークの道をアーティストとともに歩きます。
日時:2019728日(日)14:30-16:00
講師:アーサー・ファン
会場:アトリエ及び屋外
定員:10名(申込制/先着順)
参加無料

③美術と手話  「手話で楽しむ鑑賞ツアー」
聞こえる人、聞こえない人、聞こえにくい人、みんなで楽しむ作品鑑賞ツアー。
日時:201984日(日)15:00-17:00
講師:美術と手話プロジェクト
会場:展示室
対象:小学生以上(小学生3年生以下は保護者同伴)
定員:10名(申込制/先着順)
参加無料(要観覧券)

④シンポジウム  「フィールドワークからの作品制作」
アーティストと作品制作協力者が一堂に会し、今回のプロジェクトについて語ります(手話通訳付き)。
日時:2019810日(土)14:00-16:00
会場:エントランスホール
席数:約30席(事前申込不要) 
参加無料

⑤フィールドワークショップ 「みちの音を摘み取る」
茅ヶ崎の道を歩きながら、作品を使って音を集めるツアーを行ったあと、それぞれの音を実際の会場に展示します。
日時:2019811日(日)14:00-16:00
講師:金箱淳一+原田智弘
会場:アトリエ及び屋外
対象:小学生以上(小学生3年生以下は保護者同伴)
定員:10名(申込制/先着順)
参加無料

⑥電気工作ワークショップ 「キツネも歩けば光る・奏でる」
電子部品をはんだ付けしてキツネの電子基板アクセサリーを組み立てます。
日時:2019825日(日)15:00-17:00
講師:MATHRAX〔久世祥三+坂本茉里子〕
会場:アトリエ
対象:小学生以上(小学生3年生以下は保護者同伴)
定員:10名(申込制/先着順)
料金:1,000

⑦キュレータートーク
担当学芸員が展覧会について解説します。
※視覚に障害のある方もご相談ください
日時:
2019731日(水)11:00-12:00 <終了しました>
2019831日(土)14:00-15:00
担当:藤川悠(学芸員)
会場:展示室
参加無料(要観覧券/事前申込不要)


インフォメーション

美術館まで(から)つづく道

会期:2019年7月14日(日)〜9月1日(日)
会館時間:10:00-18:00(最終入場は17:30)
休館日:月曜日(ただし7月15日、8月12日は開館)、7月16日(火)、8月13日(火)
会場:茅ヶ崎市美術館(茅ヶ崎市東海岸北1-4-45)
観覧料:一般600円(500円)、大学生500円(400円)※( )内は20名以上の団体料金
※小学生以下、中学生、高校生、障害者およびその介護者は無料。
※市内在住65歳以上の方は無料。

主催:公益財団法人茅ヶ崎市文化・スポーツ振興財団
協賛:ホルベイン画材株式会社
協力:公益財団法人かながわ国際交流財団、株式会社インクルーシブデザイン・ソリューションズ、SHISEIDO、高砂香料工業株式会社、神戸芸術工科大学デジタルクリエイションラボ、CHIGASAKI Basse、株式会社ボンド
助成:公益財団法人 花王 芸術・科学財団

お問い合わせ:
茅ヶ崎市美術館
TEL:0467-88-1177
FAX:0467-88-1201
Eメール:bijutsukan@chigasaki-arts.jp
Webサイト:http://www.chigasaki-museum.jp/exhi/2019-0714-0901/

会場

[茅ヶ崎市美術館] 日本、神奈川県茅ヶ崎市東海岸北1丁目4−45 茅ヶ崎市美術館

茅ヶ崎市美術館
日本、神奈川県茅ヶ崎市東海岸北1丁目4−45 茅ヶ崎市美術館