近年、芸術の多様化にともない、自分たちで新しい価値を作り、発信するような営みが各地で展開されています。障害のある人のアート活動においても、これまで注目されていなかった小さな表現にもスポットが当てられるようになり、また、障害者の芸術に関する法律が施行されるなど、国を上げた普及のムードが広がっています。しかし一方で、障害のある人の表現が「障害者アート」といった限定された価値観のなかで評価されている現状もあります。
障害を問い直し、固定した価値感を揺さぶる取り組みや、ケアをする人/される人、健常者/障害者といった関係を変えるユニークな事例から、分断ではなく越境することでうまれる人間の多様性と豊かな関わり合いの可能性を見つけるセミナーが開催されます。
【プログラム】
7月20日(土)
イントロダクション「強くなるために弱くなる」芸術運動
播磨靖夫(一般財団法人たんぽぽの家 理事長)
「弱いものが強いものに勝ち、柔らかいものが剛いものに勝つ」(老子)。この言葉と共鳴しながらたんぽぽの家の運動や、エイブル・アート・ムーブメントを展開してきた立場から、現代を生き抜くための社会デザインの理念を共有します。
基調講演「人間の芸と自然の理」
熊倉敬聡(元慶應義塾大学理工学部 教授、元京都造形芸術大学芸術学部 教授/京都)
欧米を中心に考えられていたアートの概念は、今日限界を迎えつつあります。アートでないものをアート化していくロジックも当たり前になった現在、私たちの社会ではどうアートを捉えていったらよいのでしょうか。日々の暮らしの中で人間と自然のデザインについて考えたり、「つくること」を再定義してこれからの美を再発見しようとする熊倉さんの実践を通じ、そのヒントを探します。
事例紹介1「見えないものを見る〜障害のある人の表現がつなぐ人と人〜」
李萬鏗(サンドウィッチスタジオ[三明治工]共同設立者/台湾)
台湾を拠点に、行政、企業、NPO など多様な人たちとの共働により、障害のある人や生きづらさを抱える人たちの社会参加のきっかけを作っている「三明治工」。デザインコラボからアートプロジェクトまで、多岐にわたる活動の根底には、社会の中の「弱さ」の価値をひっくり返そうとする姿勢があります。その理念と実践を聞きます。
事例紹介2「こんな公民館、あり?地域の可能性を広げる公共施設の底力」
宮城潤(若狭公民館 館長/沖縄)
沖縄・那覇市にある若狭公民館は、分野を横断したワークショップや、みずから外に出て外国人や地域住民と交流をする「パーラー公民館」、活動自体を自己評価するための「じゃばら手帳」など、公共施設のありかたを手探りで問い直す活動を続けています。既存のアートの枠組みやフィールドではない場所で、公共施設の根源的な力を活かす活動を聞きます。
オプション選択
次のプログラムの中からいずれか1つを選択参加
①アートセンターHANAツアー
②ダンス作品「だんだんたんぼに夜明かしカエル」をだんだんと振り返る
③障害とアートのなんでも相談室
④「OPEN KITCHEN」福祉施設と芸術大学のコラボレーションの可能性
交流会
7月21日(日)
選択プログラム
A-1「地域で場を開く -つくること、発信すること-」
大政愛(はじまりの美術館 学芸員/福島)
大山真司 (NPO法人Lanka 施設長/鹿児島)
障害のある人の創造の場や仕事の場や仕事の場、表現を発信する場を地域に開いていく活動が増えています。日常の活動のなかで表現の場をつくったり、施設の外との風通しを良くしたり、場の意味を組み替えることで新しい関係が生まれる事例を紹介します。
B-1「高齢化・重度化する障害とアート」
吉永朋希(たんぽぽの家アートセンターHANA アートディレクター)
小和田直幸(社会福祉法人みぬま福祉会工房集 スタッフ)
歳を重ねることが楽しみになる社会をつくりたい。どんな障害があってもその人の創作意欲を支えたい-そんな思いで、高齢化に寄り添いながら生活における創作活動をしている事例や、重度の障害のある人の表現をサポートするさまざまな道具や仕組みをご紹介します。
C-1「障害のある子どもたちの発達と教育」
風間康寛(NPO法人エシカファーム 理事長/静岡)
高橋智(NPO法人EPO 代表 理事長/静岡)
自然豊かな環境や動植物とのコミュニケーションをとおして、生きること、表現すること、他者と関わりあうことの大切さを学ぶことができます。障害のある子どもたちの人間力を高めていく取り組みを伝えます。
自由参加プログラム
アートセンターHANAの15年を振り返る
今年15周年を迎えたアートセンターHANA。変化するニーズに向き合いながら展開してきた活動をご紹介します。
Good Job!センター香芝の仕事紹介
障害のある人の新しい仕事を作ることを目指し、2016年にオープン。 多様な活動をメンバーが紹介します。
選択プログラム
A-2「IoTとFabと福祉 -新しい技術を仕事と暮らしにいかす-」
冨本浩一郎(山口大学 国際総合科学部 講師/山口)
藤井克英(Good Job!センター香芝 副センター長)
小林大祐(一般財団法人たんぽぽの家 スタッフ)
たんぽぽの家では、全国の福祉施設や専門機関と連携し、3Dプリンタなどのデジタル工作機器のものづくりや、センサーを使ってケアの負担を減らす事例など、さまざまな実験を続けています。最新の技術をつかった取り組みを共有します。
B-2「知的財産権について知ろう!」
橋本高志(社会福祉法人ぷろぼの 京阪奈エリアリーダー/奈良)
森下静香(Good Job!センター香芝 センター長)
後安美紀(一般財団法人たんぽぽの家 スタッフ)
アート作品の制作や、商品開発など、創造におけるさまざまな場面で関わってくる知的財産権は、表現を守りながら広げていくための大切なルールです。そんな知的財産権について、身近な事例から考えたり、参加者同士でゲームにより学び合うプログラムを実施します。
C-2「アーティスト、私の仕事です。」
檜皮一彦(美術作家/大阪)
栗田淳一・早川弘志(社会福祉法人やまなみ会 やまなみ工房/滋賀)
障害のある人のアート活動が広まるにつれ、アートを自分の仕事にしたり、継続した活動により社会的な評価をうける人たちも増えています。一方で「障害者アーティスト」という言葉やイメージが先行し、ストレートに表現を伝えにくい場面もあります。活動を継続している人たちの本音を聞き、ともに考えます。
全体振り返り
【お申し込み方法】
①「参加申込フォーム」に必要事項をご記入いただき送信してください。
*ご希望のプログラムに添えない場合は連絡させていただきます。
*参加申込フォームはこちら
*FAX申込の場合はチラシPDFをダウンロード、プリントアウトしてお申し込みください。
②参加費(交流会費、ランチ代含む)をお近くの金融機関からお振込ください。
*参加費:全日参加 一般15,000円 学生10,000円
部分参加(どちらか1日のみ) 一般8,000円 学生5,000円
*7月20日(土)交流参加費 どなたでも4,000円
*7月21日(日)ランチ600円
銀行振込み:
南都銀行 西ノ京支店(普通)2078235
または、ゆうちょ銀行 一〇九(イチゼロキュウ)店(当座)0007812
名義:一般財団法人たんぽぽの家
郵便払込み:
01080−6−7812 加入者名:一般財団法人たんぽぽの家
*通信欄に「セミナー参加費」とお書き添えください。
お申し込み締切:2019年7月12日(金)
定員(各日100名)になり次第締切り。
おことわり
キャンセルには下記の通り、キャンセル料がかかりますのでご注意ください。
◎7月13日(土)〜7月19日(金) 参加費の50%
◎7月20日(土)、21日(日) 参加費の100%
*やむを得ない事情により、プログラムの一部を変更させていただく場合があります。
*お預かりした個人情報は、本セミナーの受付事務においてのみ使用させていただきます。
無料送迎バスのご案内
近鉄奈良線・学園前駅南口と、セミナー会場のたんぽぽの家アートセンターHANA間を2日間とも、セミナー開催時間/終了時間にあわせて運行します。詳細は、〈たんぽぽの家〉サイト(http://tanpoponoye.org)にてご案内いたします。