マルチメディア演劇のパイオニア的存在でもあり、2014年にはアメリカで芸術家への最高の栄誉であるNational Medal of Artsを受賞した演出家ピン・チョンによる新作公演『Ping Chong’s ドキュメンタリー・シアターUndesirable Elements 「生きづらさを抱える人たちの物語」』。1995年、読売演劇賞作品賞を受賞した『Undesirable Elements「ガイジン~もうひとつの東京物語」』以来、24年ぶりに日本での制作に取り組みます。
本公演では現代の日本社会で様々な「障害」や「生きづらさ」と向き合う6人にスポットを当て、演出家の阪本洋三とともに、社会に潜む課題をすくい上げます。公募で選ばれた出演者6人が、聴覚障害、視覚障害、身体障害、記憶障害、性別違和など、さまざまな背景にある自らの人生に向き合い、語っていきます。
また本作では、障害のある方に向けた鑑賞サポートにも力を入れており、字幕や手話通訳、音声ガイド等のほか、公演最終日には障害のある方とそうでない方が作品について語り合う「アフターセッション」という試みを行います。
【関連イベント】
①アフタートーク
演出家によるアフタートークを終演後の劇場にて開催。日本語字幕あり。
東京公演:2019年1月19日(土)午後2時公演終了後、30分程度
大阪公演:2019年1月26日(土)午後2時公演終了後、30分程度
*本公演のチケットまたは半券をお持ちの方のみ参加可能
②アフターセッション
参加者がお互いの鑑賞体験を共有することで、公演への理解を深める会。出演者、演出家の参加なし。日本語字幕なし。予約制。
東京公演:2019年1月20日(日)午後2時公演終了後、45分程度
大阪公演:2019年1月27日(日)午後2時公演終了後、45分程度*予約に関してはwebサイトをご確認ください。
③レクチャー
演出家ピン・チョンによる演劇レクチャー。
タイトル:東京芸術劇場「障害とパフォーミングアーツ」Ping Chong’s ドキュメンタリー・シアター『生きづらさを抱える人たちの物語』~「障害」や「生きづらさ」と向き合う人々との作品創造
日時:2019年1月14日 (月・祝) 14:00~16:00
*詳細、お申込方法などは東京芸術劇場のHPをご覧ください。
http://www.geigeki.jp/performance/event224/
【キャストプロフィール】
岩本 陽(いわもとよう)
統合失調症2級、性別違和(身体が女性で心が男性)のダブルマイノリティー。小学生高学年から中学生までイジメにあい、高校2年生で耐えられなくなり中退をする。そして、家に引きこもる生活を送る。家族との関係も悪化していたため、誰にも打ち明けられなかった。その後、精神病を発症する。精神のリハビリ、ジェンダークリニックに通院。障害者雇用枠で働くが退職。その後精神の施設を利用したり、LGBTの自助グループにも参加しながら、画家という生きる道が見つかり、活動している。
大橋ひろえ(おおはしひろえ)
栃木県小山市出身。聞こえない世界の住人。栃木県宇都宮市私立作新学院を卒業した後、手話演劇やDANCE、自主映画製作を始める。1997年に制作したビデオ作品「姉妹」で「SIGHT・サイト映像展」に入選。1999年、俳優座劇場プロデュースの「小さき神のつくりし子ら」で主役・サラに一般公募で撰ばれ、好評を博す。この舞台で第七回「読売演劇大賞」優秀女優賞を受賞。その後、渡米して演劇やダンスの勉強をする。2006年、サインアートプロジェクト.アジアン初企画サインミュージカル「Call Me Hero!」をスタートし、好評を得る。現在、俳優として活躍中。
Julia Olson(ジュリア・オルソン)
岐阜県生まれ。ロンドン、東京、カリフォルニアで育つ。19歳の時、交通事故により、ほぼ全身の自由を奪われる。人生を一変させた事故以後、沸き起こる恐怖、喪失感、自己懐疑ほか数多の感情を克服し、生来の明るさを取り戻す。懸命で継続的なリハビリにより医師の予測を覆す回復を見せる。リハビリ後、日本に移り外資系金融会社に勤め、現在は都内で婚約者と暮らす。自身の回復と変化を遂げていく姿をウェブサイトで発表し、多くの人々に勇気を与え続けている。
成田由利子(なりたゆりこ)
東京生まれ、東京育ち。筑波大学付属小学校・立教女学院中学校・高等学校・立教大学文学部英米文学科卒業。大学卒業間際に突然、右目が見えにくくなる。6年間会社勤務の後、結婚。2人の子供を出産する。その後、右目の視力を失う。2010年ごろに左目も見えにくくなり、2017年ごろから視力はさらに低下する。現在、視覚障害2級。趣味はカラオケ、キーボード演奏など。
西村大樹(にしむらだいき)
14歳から独学でクランプを初めとしたストリートダンスを始める。大学からコンテンポラリーダンスを始め、「第29回全日本高校・大学ダンスフェスティバルin神戸」にて全国3位となる。「東京なかの国際ダンスコンペティション2017」創作部門にて、ソロとして「なかの洋舞連盟賞」受賞。IDC響第5回公演にて、平原慎太郎作品出演。2018年3月「アジア太平洋障害者芸術祭」にてDAZZLE作品へ参加。NHKなどのメディア出演でマイノリティーが放つ身体表現の魅力、軟骨無形成症当事者が向き合う社会問題を伝えている。自由舞踊団 Wallva主宰、Integrated Dance Company響-kyo・アガイガウガ Powerd by SOCIALWORKEEERZ所属。
HARMY(ハーミー)
4歳から新体操を始める。第20回、21回全日本ジュニア新体操選手権大会、団体競技において優勝(キャプテンを務める)。平成16年10月、財団法人千葉県体育協会から功労賞を受賞。新体操引退後、20歳からダンスを始める。21歳で難病「多発性硬化症」を発症。数回の再発を繰り返し、29歳で記憶障害、遂行機能障害、注意障害、半側空間無視で障害者手帳を取得。新体操チーム,フィギアスケート選手、ダンススタジオなどにおいてダンス指導、作品提供を行う。ステージに立つまでが大変だが、舞台の上で障害は一切感じさせない。難病、障害からくる苦しみ生きづらさを自分だけの表現に変えてゆく表現者。
【演出家プロフィール】
作・演出:Ping Chong(ピン・チョン)
演出家、振付家、映像アーティスト、Ping Chong + Company創設者。 演劇にメディアを取り入れたパイオニア的存在の国際的アーティスト。1972年以来、国内外で100を超える作品を制作する。人形劇やダンス、ドキュメンタリー劇、サウンド、メディア、その他の実験的な演劇手法を取り入れ、アフリカで隠ぺいされた大虐殺から中国の近代化、9.11以降のアメリカでの若いイスラム教徒の体験まで幅広いテーマを探求している。1995年東京国際舞台芸術フェスティバルで『ガイジン~もうひとつの東京物語』を阪本洋三氏と共作・共同演出で発表。アメリカ最高位の芸術賞・National Medal of Arts(国家芸術勲章)のほか、BESSIE賞(ニューヨーク・ダンスパフォーマンス賞)、OBIE賞(オフ・ブロードウェイ演劇賞)を受賞。
企画・共作・共同演出:阪本洋三(さかもとひろみ)
舞台芸術プロデューサー、演出家。NHKドラマディレクターを経てフリーに。ニューヨークを拠点に異文化の共存・共生を目的とした国際的文化交流のNPOを立ち上げ、国際交流基金Performing Arts JAPANや文化庁の日米舞台芸術交流事業、NHKのドキュメンタリー番組制作など文化事業の企画制作を手がけた。またブロードウェーの芸術家とオリジナル・ミュージカルを制作・演出したり、ニューヨーク・シティ・バレエ団やダンス・シアター・オブ・ハーレムの団員らと舞踊作品を作り発表してきた。チョン氏とはニューヨークで出会い、1992年の“Undesirable Elements”のオリジナル・キャストとして参加、再演時には演出補佐を務めた。現在、近畿大学文芸学部芸術学科舞台芸術専攻教授として研究・教育にも携わっている。